いつか、父からそう聞いてはいたけれど。
ほんとうに、僕は・・・
だんだん、足が上がらなくなって・・・
何度も、もう、やめようと思った。
あきらめてもよかったんだ。
最初から、そのつもりだった。
先輩からのアドバイスも、時計を見て引き返せ・・・って。
なぜ、登れたのかな・・・
きみが歩き続けた・・・から?
今は、そうとしか、思えない。
雪には、ほんとうに苦しんだね。
3歩、歩けば潜ったし、
アイゼンが効かなくて・・・
きみも、僕も、何回、転んだか、わからない。
いちばん、高い場所からは・・・
日本でいちばん高い山と、日本で2番目に高い山が見えた。
南アルプスの向こうには、中央アルプスが・・・
その遥か、彼方には北アルプスがあった。
そうだ。
北アルプス・・・
僕の青春があった場所だ。
白馬、立山、剣岳。
十七の頃、夢中で登ったんだ。
火打から、父と、富士山を見たこともあった・・・。
誰もいなかったら、きっと僕は泣いていた。
ずっと、探していた・・・
僕の立てる場所を、やっと見つけることが出来た。
ありがとう。
きみに、巡り合えて、ほんとうに、よかった。