画像をほんの少しだけ回転させるプログラムを書いた。そこでの角度の指定は、最大でも1°未満を想定(整数値だと大きすぎ)。そこで、回転角度の値を指定するTEditへ、キーボードから直接入力する場合は、0.01刻みでのインプットを可能としたが、TEditとTUpDown等の数量を扱うVCLを組み合わせての入力、つまり、マウスで▲・▼マークをカチカチクリックして値を増減させて入力する場合には、TEditに設定する値は「0.01」刻みでは小さすぎるから、「0.1刻みで増減」させようと思った・・・んだけれど、これが難しかった。
【訂正】 これが難しかった → これが、(僕には)難しかった。
最初はTEditとTUpDownを組み合わせて、これを実現しようとしたが中々上手く行かず、仕方がないから、TEdit1個とTButton2個を組み合わせて、なんとか当初の目的を実現。その後、当初、気がつきませんでしたが、TEditとTUpDownの組み合わせで、Float値を増減させる方法も見つけました。これはその覚え書きです。
【もくじ】
1.TEditとTUpDownでチャレンジ
2.TEditとTButton2個でチャレンジ
3.増減値が0にならない理由
4.コードを修正
5.0.1ずつ増減
6.まとめ
7.お願いとお断り
1.TEditとTUpDown
とりあえず定番と思われるTEditとTUpDownの組み合わせ。
UpDown1のAssociateプロパティにEdit1を設定
Edit1にUpDown1がくっついた!
くっつく位置は左右いずれかを指定できるらしい。
画像の回転が目的だから、とりあえずUpDown1のMaxプロパティは90、Minプロパティは-90に設定。
(実際に使用する値は1°未満の予定)
で、Edit1の値を0.1ずつ増減させる「UpDown1Click手続き」を次のように作成。
procedure TForm1.UpDown1Click(Sender: TObject; Button: TUDBtnType);
var
Value: Real;
begin
//注意:このコードは、期待通りに動作しません
Value := StrToFloatDef(Edit1.Text, 0);
case Button of
btNext: Value := Value + 0.1;
btPrev: Value := Value - 0.1;
end;
Edit1.Text := FloatToStrF(Value, ffNumber, 1, 1);
end;
実行(F9)して、▲ボタンを3回クリックしたところ
1ずつ、増加してる・・・。
なんでかなーって、ちょっと思ったけど、UpDown1のincrementプロパティを見て納得。
足したり、引いたりしている 0.1 はどこに消えたのか・・・?
とりあえず、原因の一つはコレだ☆
やりたいのは「1」ずつじゃなくて「0.1」ずつ増減だから、そう!
Increment プロパティを 0.1 に変えてみた *(^_^)*♪
ひー(心の悲鳴)
Incrementプロパティには、整数しか設定できないようだ。
整数・・・ そぉか、0ならOK?
Value(=Editに表示されている値) に 0.1足したり、引いたりしてるから、これでイケる?
実行(F9)すると・・・
Value + 0.1や、Value – 0.1はどこに消えた?
1.1 とかになってたから、完全に無視されてるわけでもなさそうだけど・・・???
Increment プロパティが整数値指定だとわかった時点で、なんか嫌な予感がしたんだよなー
他にも、Maxとか、Minとか、入力を制限する値(こちらも整数値で指定)もあるし・・・
ここで謎を追いかけて、無駄に時間を使うより、TUpDownは「整数値専用」と決めて、他の方法を試すことに決定。※ 実際、TEditとTUpDownの組み合わせで、小数値の増減も可能です(後述)
2.TEditとTButton2個でチャレンジ
Edit2の右に、Buttonを2つ置いて、こんなふうにしてみた。
で、コードは Copilotさん に教えてもらった☆ その質問内容と答えのコードがこちら。
(コード部分はコピー可能だったから著作権的な問題はないと判断)
Q:DelphiでTEditの値を0.1ずつ増減するにはどうしたらいいですか?
A:Copilotさんが教えてくれたコード。
procedure TForm1.Button1Click(Sender: TObject);
var
Value: Double;
begin
if TryStrToFloat(Edit2.Text, Value) then
begin
Value := Value + 0.1;
Edit2.Text := FloatToStr(Value);
end
else
ShowMessage('Invalid number');
end;
procedure TForm1.Button2Click(Sender: TObject);
var
Value: Double;
begin
if TryStrToFloat(Edit2.Text, Value) then
begin
Value := Value - 0.1;
Edit2.Text := FloatToStr(Value);
end
else
ShowMessage('Invalid number');
end;
これなら間になんにも入らず、直接Editを編集してるから、絶対、大丈夫 だろ?
最初からコレでよかったんだ・・・ みたいな気持ちで、コピペして編集し、実行(F9)。
▲をカチカチ、2回クリックしました。イイ感じです!
で、減算(▼クリック)は、初期値が上の 0.2 のところから始めると・・・
次の▼クリックで、値は「0」になるはず。
ところが・・・
はぁ? 0.1 – 0.1 = 0.0(ゼロ)になるはずなんだけど・・・
ナニ、コレ?
3.増減値が0にならない理由
そうでした。コンピュータは小数の演算が苦手でした。
僕自身、前にさんざん苦しみました。なんで上の計算が「0」にならないのか?
その理由は、次の記事をご参照ください。
Win11の23H2より前のバージョンなら、正しいと思える答えにたどり着くまでGoogle先生に質問を繰り返すのがこれまでの問題解決の定番と言える方法でしたが、今はとなりにCopilotさんがいてくれます。
期待を込めて、訊いてみました。
Q:Delphiで0ではなく、5.54975987041018E-18と表示されます
以下、Copilotさんの返答の概要です。
・浮動小数点数(DoubleやSingle型など)は完全な精度で表現されない。
・これは、すべてのプログラミング言語で共通の問題。
・解決策の一つは、ある閾値(epsilon)よりも結果が小さい場合は 0 と表示。
完全に納得。
Copilotさん、優秀!
ぼく、きみのファンになりました☆
で、以下、Copilotさんが教えてくれた閾値を設定したコードです(コメント文は短縮)。
var
Value: Double;
Epsilon: Double;
begin
Epsilon := 1E-15; //閾値を設定
Value := SomeCalculation(); //計算を実行
if Abs(Value) < Epsilon then
Value := 0;
Edit1.Text := FloatToStr(Value);
end;
4.コードを修正
Copilotさんが教えてくれたコードを読んで、「0.0」と表示されるように修正しました。
procedure TForm1.Button3Click(Sender: TObject);
var
Value: Double;
Epsilon: Double;
begin
Epsilon := 1E-15; //閾値を設定
if TryStrToFloat(Edit3.Text, Value) then
begin
Value := Value + 0.1;
if Abs(Value) < Epsilon then
begin
Value := 0;
Edit3.Text := '0.0';
end else begin
Edit3.Text := FloatToStr(Value);
end;
end;
end;
procedure TForm1.Button4Click(Sender: TObject);
var
Value: Double;
Epsilon: Double;
begin
Epsilon := 1E-15; //閾値を設定
if TryStrToFloat(Edit3.Text, Value) then
begin
Value := Value - 0.1;
if Abs(Value) < Epsilon then
begin
Value := 0;
Edit3.Text := '0.0';
end else begin
Edit3.Text := FloatToStr(Value);
end;
end;
end;
ゼロの時は、’0’ではなく、’0.0′ と文字列指定しているところに「こだわり」ました!
5.0.1ずつ増減
上記コードの実行結果です☆(初期値は 0.2)
閾値が効きました☆
逆(▲クリック)も正しく動作することを確認。
【TEditとTUpDownの組み合わせで実現】
TUpDownのMax及びMinプロパティの値(特にMin)を適切な値に設定し、適切なコードを記述することで、TEditとTUpDownというVCLコンポーネントの組み合わせでも 0.1 刻みの選択肢設定が可能であることを確認しました。その方法は以下の通りです。
※ オブジェクトインスペクタで Increment プロパティの値を予め設定しておくという前提で、
【重要】 負数の入力を想定する場合は、TUpDownのMinプロパティの値に適切な負数を設定します!
【重要】 Increment プロパティに 1 を設定 → ▲をクリック → 値が 0.1 ずつ増加
ちなみに Increment プロパティに 2 を設定した場合は、値が 0.2 ずつ増減します。
procedure TForm1.UpDown1Click(Sender: TObject; Button: TUDBtnType);
begin
Assert(Sender is TUpDown);
with TUpDown(Sender) do
begin
Assert(Associate is TEdit);
TEdit(Associate).Text := FloatToStrF(Position / 10, ffNumber, 1, 1);
end;
end;
上記コードの出典は、こちら
https://www.delphipraxis.net/143779-tupdown-floats.html
貴重な情報をご教示くださいましたこと、投稿者様に対し、心より感謝申し上げます。
上のコードを参考に、使っているVCLの名前を指定して、もっと短くして書けば・・・
procedure TForm1.UpDown1Click(Sender: TObject; Button: TUDBtnType);
begin
Edit1.Text := FloatToStrF(UpDown1.Position / 10, ffNumber, 1, 1);
end;
増減値に 0.1 ではなく、0.2 以上の値を設定したい場合、Increment プロパティの値は予めオブジェクトインスペクタで指定しておいた方が良いようです。
ちなみにオブジェクトインスペクタのIncrement プロパティに設定してある値は「1」のまま、コードで「2」を指定した場合は・・・
procedure TForm1.UpDown1Click(Sender: TObject; Button: TUDBtnType);
begin
UpDown1.Increment := 2;
Edit1.Text := FloatToStrF(UpDown1.Position / 10, ffNumber, 1, 1);
end;
実行(F9)してみるとエラーにはなりませんが、最初の▲押し下げ時に 0.2 ではなく、0.1 と表示されます。また、実行(F9)後、最初の▼押し下げ時には -0.2 ではなく、-0.1 と表示されます。それ以降(▲・▼2回目押し下げ以降)は正しく表示(意図した通り表示)されます。
オブジェクトインスペクタのIncrement プロパティに設定してある値が「1」のまま、コードで値を設定・変更する場合は(実行途中での変更はできませんが)FormCreate時に設定しておけば期待通りに動作するようです(もし、違っていたら、ごめんなさい)。
procedure TForm1.FormCreate(Sender: TObject);
begin
UpDown1.Increment:=2;
end;
procedure TForm1.UpDown1Click(Sender: TObject; Button: TUDBtnType);
begin
//UpDown1.Increment:=2;
Edit1.Text := FloatToStrF(UpDown1.Position / 10, ffNumber, 1, 1);
end;
PCの画面で確認すれば、設定状況がわかりやすいと思います。
以上が、TEditとTUpDownの組み合わせで小数値を増減させる方法のまとめです。
6.まとめ
(1)TEditとTUpDownの組み合わせで0.1刻みの数値の増減は可能。
(2)TUpDownで負の数を扱う場合は、Minプロパティの値も適切に設定する。
(3)TEditとTButtonの組み合わせで小数値の増減計算を行う場合は値「0」に注意する。
7.お願いとお断り
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