『有終』

日本語には、たまらなく美しい言葉がある。
僕は、言葉たちに触れる度、いつも、その美しさを思う。

有終。

この言葉は、ことのほか、美しく、哀しみに溢れて、そして儚い。

卒業の日はいつも・・・
この言葉を、思い出してきたけれど・・・

きみは、今日まで、どれほどの悲しみにたえてきたことだろう。

今日、きみの話をきいて・・・
僕の理解の、はるか向こう側に、きみの深い悲しみがある気がした。

それでも、きみは、今日へ向かって、精一杯に歩いたんだね。
それだけは、僕にも理解できたよ。

きみは決して負けなかった。
ほんとうに、よく、がんばったね。

目指したことの終わり。その終わり方が「大切」なのはもちろんだね。
では、目指したことの、終わりへ向かって、どう「歩くか」。
その「歩き方」を、この冬の経験から、きみは確かに学んだはずだ。

若いんだ。一度くらい、がむしゃらになってもいい。
思い切り転んだっていい。口惜しさに、涙することが・・・ あっても、いい。

でも、最後に努力が報われて、
笑顔のきみに会えて、ほんとうに・・・、本当に・・・、よかった。

合格。心から、おめでとう。
僕自身、壊れそうなくらい、うれしい。

これだけの経験をしたんだ。
失くしたものよりも、きみが得たものは大きいはずだ。
それを『 何よりも 』大切にして、これからは、もっと きみらしく 歩くんだ。

ものごとには、必ず、終わりがある。
それが「いつ」訪れるのか、多くの場合、それもまた、見えている。
明日からは、きみが得たものが、そこへ向かう「歩き方」を きみに教えてくれるはずだ。

やがて、きみは、レディになる。
そう・・・ お父さんが愛した、きみのお母さんのような、すてきな、レディに。

自分も、それから周りの人たちも・・・
みんながしあわせになれる歩き方を、レディは最初に考える。

レディになったきみに会えないのは、とても残念だけれど・・・、
ひとつだけ、信じ切れることがあるから・・・

その時、きみのとなりには、きみを心から愛してくれる、
すてきな彼が、必ずいてくれるはずだ・・・。

たとえ、レディになったきみであっても・・・

彼の前でなら、もう表情を隠さなくてもいい。
彼の前でなら、もう無理して微笑まなくてもいい。
そう・・・、彼の胸でなら、安心して声をあげて泣いていい。

きみのほんとうを、心を、
これまできみにあったことのすべてを包む・・・
彼の優しさと、きみへの愛を、僕は心から信じている。

さっきは、必ずと言ったけれど・・・
僕の中には、唯一、終わることのない、永遠もある。

きみと僕との運命の線は、ここで交差し、再び離れ、日々その距離を増し、
もう二度と交わることはないだろう。それでも・・・。

今日、うまく言葉にできなかったけど、
これが、きみに、伝えたかったことなんだ・・・

きみと、きみのお父さん、弟さん、おばあちゃん、
そして・・・、きみのお母さん

きみと、きみにつながるすべての人のしあわせを願う
この想いは、永遠なんだ。

僕の中で、間違いなく、永遠なんだ。
終わりなんて、ない。

だから、空を見上げるたびに・・・
きみのしあわせを願い、祈っている。

いつも、そして

いつまでも ・・・