Object Pascal」カテゴリーアーカイブ

Delphiで使用するプログラミング言語

範囲チェックエラーが出た時は?

{$R-}で範囲チェックさせない!

Delphiで、画像をグレースケール変換するプログラムを作成。実行すると、

表示されたエラーメッセージ

プログラムのコードは、次の通り。
Image1に表示した画像をグレースケールに変換してImage2に表示するというモノ。

unit Unit1;

interface

uses
  Winapi.Windows, Winapi.Messages, System.SysUtils, System.Variants, System.Classes, Vcl.Graphics,
  Vcl.Controls, Vcl.Forms, Vcl.Dialogs, Vcl.StdCtrls, Vcl.ExtCtrls, Jpeg,
  Vcl.ComCtrls;

type
  TForm1 = class(TForm)
    Image1: TImage;
    Image2: TImage;
    Button1: TButton;
    StatusBar1: TStatusBar;
    procedure FormCreate(Sender: TObject);
    procedure Button1Click(Sender: TObject);
  private
    { Private 宣言 }
  public
    { Public 宣言 }
  end;

var
  Form1: TForm1;

implementation

{$R *.dfm}

function CreateGrayScalePalette(Tone:Byte): HPALETTE;
var
  Palette: ^TLogPalette;
  i: Integer;
begin
  GetMem(Palette, SizeOf(TLogPalette) + SizeOf(TPaletteEntry) * Tone );
  Palette^.palNumEntries:=Tone+1;
  Palette^.palVersion:=$0300;
  for i := 0 to Tone - 1 do begin
    Palette^.palPalEntry[i].peRed:= Tone - i;
    Palette^.palPalEntry[i].peGreen:= Tone - i;
    Palette^.palPalEntry[i].peBlue:= Tone - i;
    Palette^.palPalEntry[i].peFlags:= 0;
  end;
  Result:=CreatePalette(Palette^);
  FreeMem(Palette);
end;

procedure TForm1.Button1Click(Sender: TObject);
var
  X, Y: Integer;
  Bmp: TBitmap;
  P: PByte;
begin
  Bmp := TBitmap.Create;
  try
   Bmp.Assign(Image1.Picture.Bitmap);
   Bmp.PixelFormat := pf8bit;
   Bmp.Palette := CreateGrayScalePalette(255);
   Image2.Picture.Bitmap := Bmp;
  finally
   Bmp.Free;
  end;
  Image2.Width:=Image2.Picture.Bitmap.Width;
  Image2.Height:=Image2.Picture.Bitmap.Height;
  Image2.Visible:=True;
end;

procedure TForm1.FormCreate(Sender: TObject);
var
  jpg: TJPEGImage;
begin
  StatusBar1.SimplePanel:=true;
  // TJPEGImageオブジェクトをインスタンス化
  jpg := TJPEGImage.Create;
  try
    // Jpegファイル読み込み
    jpg.LoadFromFile('Image.jpg');
    // Image1に割り当てる
    Image1.Picture.Bitmap.Assign(jpg);
    Image1.Width:=Image1.Picture.Bitmap.Width;
    Image1.Height:=Image1.Picture.Bitmap.Height;
    //StatusBar1.SimpleText:=IntToStr(Image1.Width)+'/'+IntToStr(Image1.Height);
  finally
    // TJPEGImageオブジェクトを破棄
    jpg.Free;
  end;
end;

end.

グレースケール変換実行のボタン(Button1)をクリックすると・・・
このButton1Click手続き内で呼び出しているCreateGrayScalePalette関数でエラーが発生。

ブレークして確認すると、エラーになるのはココ。

でも、なんでエラーになるのか、わからない・・・

Google先生に訊くと、次のような情報を発見。

[Delphi?][ネタ]透明に見えるパターンを描く

https://qiita.com/pik/items/25276e49fb131425db07

早速、範囲チェックさせないコンパイラ指令 {$R-} を追加。

ナニがどうして、そうなるのか?
原因も、理由も、皆目わからないけれど・・・

範囲チェックエラーは出なくなりました!

範囲チェックを実行しないというコンパイラ指令 {$R-} は知りませんでした。
同じ理由で困ってる方もいるかもしれないと思い、記録だけUpしました。

なお、画像のグレースケール化にあたっては、次のWebサイト様にあった情報を使わせていただきました。24bitのフルカラー画像を256階調のモノクロ画像に変換(グレースケール変換)する処理を行う際に役立つ情報が、そのアルゴリズムも含めて、多数紹介されています。

カラー画像をモノクロ画像に変換

http://rakasaka.fc2web.com/delphi/grayscale.html

また、上のWebサイト様で紹介されている配列要素を動的に確保する必要のない、Delphiが独自に定義しているTMaxLogPalette構造体を使用したCreateGrayScalePalette関数を利用した場合は、範囲チェックエラーは発生しませんでした。

お願いとお断り

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This updated is support for use with high resolution devices

高DPIに対応しました!

これまでずっとPC画面の解像度は1366×768に固定して、この解像度での使用のみを前提に、僕はプログラムを書いてきた・・・。僕のプログラムが走るマシンは全部、この解像度だったから、それで何も問題は起きなかったのだけれど。

【今回の記事】

1.2880×1920の世界を知る
2.Formの表示がたいへんなコトに・・・
3.問題点を続々と発見!
4.exeを高DPI対応に設定
5.VCLの幅や高さを自動調整
6.まとめ
7.お願いとお断り

1.2880×1920の世界を知る

新しく支給されたPCの画面解像度は2880×1920で、拡大縮小率は150%に設定されてた。持ち運ぶことを考えると、ノートPCの画面サイズはそうそう大きく出来ないから、画面サイズが変わらないまま、解像度だけ上がってしまうと、相対的にアプリや文字の見た目はどんどん小さくなって、目にとてもやさしくない画面になる。だから拡大150%や拡大200%って設定が必要なんだと思うけど・・・。

取り敢えず、この環境で僕のプログラムを動かすとどうなるか、実験してみた。

1366×768、拡大率100%で表示した場合(開発時の設定)
2880×1920、拡大率100%で表示した場合

高解像度画面では、ボタンのCaptionが読めない・・・。

2.Formの表示がたいへんなコトに・・・

しかも、このプログラムから別のFormを呼び出すと・・・

たいへんなコトに・・・

自分的には、こう表示されてほしいのですが・・・
(今までは何の問題もなく、こう表示されていた)

この(今までの)ように表示するには、どうしたらイイ?

やばい。何としても高DPIに対応させないと、職場のみんなにプログラムを使ってもらうどころか、自分ひとりですら使えない。画面が高解像度になっただけで、こんな問題が生まれるなんて・・・。これまで考えたこともなかった。

けっこうショックが大きくて、心がまた折れかけたけど、この問題をクリアすれば、プログラムも、僕も、もっとよくなれるんだって、必死で自分に言い聞かせる。

3.問題点を続々と発見!

高解像度画面で一通り、プログラムの動作検証を行ってみると、見つけられただけで次のような問題が発生することがわかった。

① Formが設計時とは異なる大きさで表示される。
② 画面表示の拡大設定を行わないと、字が読めないくらい小さくなる。
③ 拡大設定時には、VCLコントロール(Toolbar)の幅や高さが意図しないものになる。

まず、①の問題の解決にチャレンジ。

FormCreate手続きでFormの幅を指定しても無駄。
まるで言うことを聞いてくれない。
いったいナニがどうなると、この問題が発生するのか?
これまで、こんな問題に出会ったこと、ないぞ・・・。

そう思いつつ、いろいろ調べてみると、次の情報を発見。

フォームを新規作成したらまずやる事 (Delphi)

https://ht-deko.com/ft1004.html#100408_02

明らかな既視感があったので、以前、どこかで見た情報に間違いないと思うのだけれど、知識として使ったことがなかったので、情報の有用性に気づいてなかった・・・。

この中に、Scaledプロパティに関して、次の記述が・・・

Scaled
常に False。True にすると OS の DPI (ユーザが指定した DPI) によってフォームサイズやコントロールサイズが勝手に変更されてしまいます。

(たぶん、コレだ・・・)

早速、すべてのFormのScaledプロパティをFalseに変更。なんでこんな問題を起こすような設定がデフォルトでTrueなんだ?・・・何か、大切な理由でもあるんだろうか?

動かして確認。

直った!(・・・というか、壊れなくなった)

これで①の問題は解決。思ったより簡単に解決できて、よかった!

4.exeを高DPI対応に設定

②の文字の大きさについて、Google先生にいろいろきいた結果、こちらもベストと思われる対応方法を発見。

Windows11でアプリやメニューが小さい時に行う高DPI設定

https://win11lab.info/win11-high-dpi/

設定方法は、次の通り。

exeを右クリックして表示されるサブメニューの「プロパティ」をクリック
「高DPI設定の変更」をクリック
「高い DPI スケールの動作を上書きします」のチェックボックスをチェックして、
拡大縮小の実行元は「システム」を選択。

で、OK → 適用 → OK と順にボタンを押して画面を閉じ、アプリを再起動すると、Formが適正な倍率で表示されてアプリやメニューが見やすくなった。ちなみに「システム」ではなく、「アプリケーション」では表示に変化がなく、「システム(拡張)」ではFontが高解像度化された感じに。

いちどexeにこの設定を実行しておけば、画面の解像度をいろいろ変更しても常にFormは適正な大きさで表示されるようになり、たいへん便利!

Windowsには、ほんとうにいろんな画面解像度の設定があるから、exeに対するこのおまじないは必須なのかもしれない・・・。これで②の問題も無事解決。

結局、②の問題は、プログラムではなく、OS側の設定の問題だった。

5.VCLの幅や高さを自動調整

最後に残った③の問題に取り組む。まず、これがどういう現象かと言うと・・・

手書き答案採点プログラムで、画面を横にスクロールさせるために作ったToolbarコントロールが、本来なら次のように表示されるはずなのに・・・

ToolButton1,2,3とBevel1の4つのコントロールの幅の合計値がToolbar1の表示サイズの幅となるはず

上の4の設定を行わず、かつ、画面の拡大縮小が100%でない場合には・・・

表示そのものが崩れてしまう・・・

職場のマシンたちは全部!デフォルト設定が「高解像度」で、画面の拡大率150%だから、何にもしないで僕のプログラムを配布されたままの状態で動かしたら、間違いなく、この問題が発生してしまう・・・。

マジ、困った・・・。

すがるような思いでGoogle先生に援けを乞う。すると・・・

03_高 DPI における画像の描画サイズ調整

http://mrxray.on.coocan.jp/Delphi/Others/DisplayDPI_Image.htm#03

またしても、Mr.XRAYさんのサイトに救いとなる情報を発見!

職場では、僕のことを「困った時の〇〇さん・・・」と呼ぶ人がいるけど、
僕にとってMr.XRAYさんは、「本当に困った時のMr.XRAYさん」です。

これまでにいったい何度、僕の窮地を救ってくださったことか・・・。
あらためてMr.XRAYさんに、心から感謝のありがとうです。

Mr.XRAYさんのホームページにあった情報をもとにプログラムを次のように修正。

procedure TFormCollaboration.btnSelectClick(Sender: TObject);

  //--------------------------------------------------------------------------
  //  ディスプレイの拡大縮小の比率を取得
  //  100% の時は 1.0.150% の時は 1.5 を返す
  //--------------------------------------------------------------------------
  function GetDpiRatio: Extended;
  var
    LXDpi : Integer;
  begin
    LXDpi := GetDeviceCaps(GetDC(0), LOGPIXELSX);
    Result := LXDpi / USER_DEFAULT_SCREEN_DPI;
  end;

var
  ・・・
  //高DPIに対応する
  VCL_Width:Extended;
  VCL_Height:Extended;

begin

  ・・・

  //解像度が変わると不具合がでる
  //r.Right := r.Left+ToolBar1.Width;
  //r.Bottom := r.Top+ToolBar1.Height;

  //解像度の変更に対応
  //幅
  VCL_Width := (ToolButton1.Width + 
    ToolButton2.Width + ToolButton3.Width + Bevel1.Width) * GetDpiRatio;
  r.Right := r.Left + Trunc(VCL_Width);
  //高さ
  VCL_Height := ToolBar1.Height * GetDpiRatio;
  r.Bottom := r.Top + Trunc(VCL_Height);

  ・・・

end;

GetDpiRatio関数を使ってディスプレイの拡大・縮小の比率を計算し、これをVCLコントロールの幅と高さに掛けて、コントロールが適切に描画されるように設定。

上記設定を行った後、実行中のToolbar
(フローティング状態で画面の任意の位置に埋め込む)

こうしてプログラム側でも、VCLコントロールの幅や高さを画面の拡大縮小に合わせるように設定しておけば、exeそのものに「高 DPI 設定の変更」を設定しなくても・・・

ちょっとカタチは崩れるけど、使えないレベルではない。
exeに「高 DPI 設定の変更」を設定せず、
拡大150%で実行してみた場合

これで③の問題も無事解決できた!

プログラムも、僕も、よくなれた☆

それは間違いない・・・から、いいんだけれど。
ひとりでも、戦えるかな・・・

Let me see you through.

空を見上げて・・・

I’m missing you.

そう思えてならない時が、あるんだ。

6.まとめ

(1)様々な画面解像度に対応するには、FormのScaledプロパティをFalseに設定。
(2)画面の拡大縮小に対応するにはプロパティの「高 DPI 設定の変更」を利用。
(3)画面の拡大縮小にプログラムコードでも対応可能。

7.お願いとお断り

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Rectangle Detector

矩形検出器

手書き答案をスキャナーで画像化して採点するソフトを書いた。概ね、思った通りにカタチになったが、解答欄の位置座標を取得するのに、解答欄の数だけ、その左上隅から右下隅へマウスでドラッグする作業を繰り返さなくてはならない。(もし、これが自動化できたら・・・) そう思って書いたのが、このプログラム。

1.矩形の検出方法
2.字数制限のある解答欄の作り方
3.GUIはDelphiで作成
4.矩形検出器の使い方
5.まとめ
6.お願いとお断り

1.矩形の検出方法

キーワードを『矩形 検出』にしてGoogle先生にお伺いをたてると、思った通りOpenCVを活用する方法がいくつもヒットする。しかも、そのほとんどすべてがPythonでの活用方法だ。Delphi用のOpenCVもあるようだけれど、次の理由から矩形の検出はPython用のOpenCVで行うことにした。

Pythonを使う利点は、まず、何と言っても、情報が豊富なことだ。マイ・プログラミング環境では、わからないことはすべてGoogle先生に教えてもらうしかないので、情報が入手しやすいことは、他のすべてに優先する。

(メインの開発環境がDelphiなのは、上記の内容と大いに矛盾しますが・・・)

さらに、手書き答案の採点ソフトより前に、マークシートリーダーを作った時、マーク欄の座標を得るために、やはりPythonとOpenCVのお世話になった。マークシートリーダーも、手書き答案の採点ソフトも、embeddable pythonに入れたOpenCVと一緒のフォルダに詰め込んでユーザーに配布しているから、Pythonを内包して使う環境は既に完成済み。PythonのスクリプトをDelphiのコードに埋め込んで、PythonForDelphiを使って実行する方法は勉強済みだから安心。Delphi用のOpenCVは、情報も少ないし、何よりその使い方がわからない・・・。

他人様に使っていただくプログラムはDelphiで書くけれど、自分専用のToolはPython環境を利用して作ることが多い。ちょっと特別なことをしたい時、Pythonはとても便利だ。いろいろ紆余曲折はあったけれど、現在はSDカードにWinPythonとAtomエディタを入れて持ち運べるPython環境を作っている。

そのSDカードに入れたPython環境で、いつものようにAtomを起動し、Web上にあったいくつものScriptをコピペして試してみる。

まず、OpenCVで「ハフ変換」なるものを利用する例だが、ハフ変換はノイズの除去で苦労しそうだ。ノイズの発生源が多数存在する解答用紙の矩形検出でパラメータを適切に設定することが果たしてできるだろうか? 経験がない自分にはちょっと厳しそうだ。

次に、LSD(Line Segment Detectorの略とのこと)という直線検出器を試した。試した瞬間、(もう、これしかない!)と思うほど、これは凄かった。使い方も超カンタンで、LSDをこれでもか!とばかりに並べるだけ。

from pylsd.lsd import lsd
Mylines = lsd(picture)

【検出結果】

LSDで検出できた矩形の例

さらに驚くべきことに、こういう作業には付き物の引数も一切ない。つまり、パラメータを調整する必要など『ない』ということなのだろう・・・。ただ、LSDはそのライセンス形態がAGPLであると知り、使用を断念。MITやBSDでないと自分的にはやはり困る・・・。

最後に試したのが、OpenCVのfindContours関数。これを使うには前処理として、まず、画像をグレースケールに変換し、さらに白黒反転させて二値化しなければならない。

import cv2
import numpy as np
from PIL import Image

# Pillowで画像ファイルを開く(全角文字対応の確認用にファイル名は「ひらがな」)
pil_img = Image.open("./img/さんぷる.jpg")
# PillowからNumPyへ変換
img = np.array(pil_img)

# グレースケールに変換する
gray = cv2.cvtColor(img, cv2.COLOR_BGR2GRAY)

# 白黒を反転
gray = 255 - gray
# 2値化する
ret, bin_img = cv2.threshold(gray, 20, 255, cv2.THRESH_BINARY)

Pillowで画像ファイルを開いているのは、OpenCVのimread関数が日本語(全角文字)に対して拒絶反応を示すので、これを回避するため。もし、ファイル名とそこまでのPathに全角文字が含まれないという確実な保証があるなら、次のようにしてもいいようだ。これなら1行で済む。

# 8ビット1チャンネルのグレースケールとして画像を読み込む
img = cv2.imread("全角文字のないPathと画像ファイル名", cv2.IMREAD_GRAYSCALE) 

で、準備が出来たらfindContours関数を使って輪郭を検出する。

# すべての輪郭を同じ階層として取得する
contours, hierarchy = cv2.findContours(bin_img, cv2.RETR_LIST, cv2.CHAIN_APPROX_SIMPLE)

解答欄には、その性格上、小さな矩形が多く使われることが多いので、閾値以下の面積の矩形は削除する。※ 閾値は整数型の数値で指定する。

# 閾値以下の面積の矩形(小さい輪郭)は削除
contours = list(filter(lambda x: cv2.contourArea(x) > 閾値, contours))

よりスムーズに作業するためには、予め、小さな矩形を消去した機械読み取り用の解答欄(解答用紙)をヒト用の解答用紙のコピーから作成し、これを用いて解答欄座標を取得した方がよい(国語の縦書き解答用紙は、ワープロソフトではなく、表計算ソフトで作成する方法が業界では一般的らしいので、機械読み取り用の解答用紙はそれほど手間をかけなくても、カンタンに作成できる・・・はず)。

解答欄矩形をちゃんと認識できているか・どうかを確認するため、検出した輪郭を描画する。このPythonのスクリプトをDelphiのObject Pascalに埋め込んで実行する際は、ここが最大の「見せ場」になる。検出した矩形をグラブハンドル付きのラバーバンドで表示する方法は後述。

# 検出した輪郭を描画する
cv2.drawContours(img, contours, -1, color=(0, 0, 255), thickness=2)

最後に解答欄矩形の座標を取得する(これが最終的な目標)。取得した座標は、採点順になるよう、並べ替えて表示する(並べ替え方法は後述)。

# 矩形の座標を表示(左上の座標, 右下の座標)
for i in range(len(contours)):
    x, y, w, h = cv2.boundingRect(contours[i])
    print(str(x)+','+str(y)+','+str(x+w)+','+str(y+h))

数値より、画像(絵)で見た方がわかりやすいのは言うまでもない。

# 保存
cv2.imwrite('./img/lined.jpg', img)
# 画像を表示
cv2.imshow("Image", img)
# キー入力で終了
cv2.waitKey()
画像を表示して、解答欄矩形の取得状況を確認

ここまでの Python Script をまとめて示せば、次の通り。

import cv2
import numpy as np
from PIL import Image

# Pillowで画像ファイルを開く
pil_img = Image.open("./img/さんぷる.jpg")
# PillowからNumPyへ変換
img = np.array(pil_img)

# グレースケールに変換する
gray = cv2.cvtColor(img, cv2.COLOR_BGR2GRAY)
# 白黒を反転
gray = 255 - gray
# 2値化する
ret, bin_img = cv2.threshold(gray, 20, 255, cv2.THRESH_BINARY)

# すべての輪郭を同じ階層として取得する
contours, hierarchy = cv2.findContours(bin_img, cv2.RETR_LIST, cv2.CHAIN_APPROX_SIMPLE)

# 閾値以下の面積の矩形(小さい輪郭)は削除
contours = list(filter(lambda x: cv2.contourArea(x) > 数値, contours))

# 検出した輪郭を描画する
cv2.drawContours(img, contours, -1, color=(0, 0, 255), thickness=2)

# 矩形の座標を表示(左上の座標, 右下の座標)
for i in range(len(contours)):
    x, y, w, h = cv2.boundingRect(contours[i])
    print(str(x)+','+str(y)+','+str(x+w)+','+str(y+h))

# 保存
cv2.imwrite('./img/lined.jpg', img)
# 画像を表示
cv2.imshow("Image", img)
# キー入力で終了
cv2.waitKey()

OpenCVのfindContours関数を使って検出した輪郭(=解答欄の矩形)の例。
(解答用紙画像はLSDを試した時と同じものを使用)

矩形を検出しやすいように作った解答用紙なら、この結果はまさに『ブラボー!』

解答用紙中の ■ や □ を検出しないよう、検出下限の閾値を設定したこともあり、期待した通りの満足できる結果が得られた。OpenCVのハフ変換や、LSDでは日本語に対する反応が見られたが、findContours関数は(適切な閾値を設定してあげれば)日本語に反応しないようだ。

答案の「答」には「口」、問にも「口」、漢字にはたくさんの矩形が使われている。適切な閾値を設定することで、誤認識を減らせることも理想的。

【実験してみた!】

閾値を「700」として、□ に対する反応を実験して確認した。結果は次の通り。

26×26=676、28×28=784 だから・・・機械は正確に反応している

28ポイントの「□」から反応するが、40ポイントの「問」には無反応。通常使用される解答用紙であれば、フォントの大きさに制限を設ける必要性はなさそう。

もう少し細かい矩形を使った解答用紙で、閾値700で実験すると・・・

解答欄の矩形をさらに細かく分割したサンプルを作成してテスト
解答欄の番号の矩形に反応してしまう・・・

閾値1400までは・・・

解答欄の番号の矩形に反応するが

閾値を1500にすると・・・

解答欄の番号の矩形には反応しなくなる☆

少し、細かい矩形を用いた解答用紙であれば、閾値1500くらいから試せば狙った通りに解答欄の座標だけを取得することができそうだ。

閾値に上限を設定すれば、さらに良い結果を得られるかも・・・と思ったが、数学の解答用紙には他の教科ではあり得ない巨大な矩形が普通に使用される。矩形を取得できなければ、検出器とは言えない。さらに、解答欄全体を一つの大きな矩形として認識してしまうのはプログラムの性格上、絶対に回避できないから、閾値の上限は設けずに、むしろ、不要な矩形の座標を削除しやすいプログラム(GUIを作成)を書けばいいと気づく。

さらに、ユーザーが矩形座標の編集(修正)を自由にできるようにプログラムを工夫すれば、理想的な矩形検出器ができるはず。

これでDelphiでGUIを作成する際の方向性も見えてきた。

2.字数制限のある解答欄の作り方

解答欄の矩形を検出する上で、大きなハードルになるだろうと予想していたのが『字数制限が設定された解答欄』。

機械読み取り用に作成した解答用紙であっても・・・

上の解答用紙は、ヒト用の解答用紙の問題番号部分にあった小さな矩形を消去して、機械読み取り処理用に作成した解答用紙。この状態で矩形を検出(閾値1500)すると・・・

それでも削除しなければならない矩形座標が多すぎ・・・

閾値を「3100」に設定して、ようやく・・・

閾値をどんどん大きくすれば、何とかなることはわかった!

閾値を大きく設定すれば、何とかなることは上の例でわかったが、閾値を大きくすれば当然必要な解答欄の座標を取得できなくなる可能性も生じてくるわけで・・・。

ところが別の国語用解答用紙を処理している際に、閾値を気にせずに字数制限のある解答欄を作成する良い方法があることを偶然発見。それは・・・

罫線に「点線」を利用した解答用紙

字数制限を設定したり、完全解答で正解としたい解答欄は内側の罫線を点線にする!

閾値「700」で実験した結果

これなら問題2の(1)・(2)が作る大きな矩形の座標のみ削除すればOK!
点線を活用することで、一番大きな問題を難なくクリアできることが判明。
やったー☆

【embeddable Pythonのバージョンとインストールしたライブラリの一覧】

Python 3.9.9

Package Version
numpy 1.21.5
opencv-python 4.5.4.60
Pillow 9.3.0
pip 22.3.1
setuptools 60.1.0
wheel 0.37.1

3.GUIはDelphiで作成

取得した解答欄の座標を編集するGUIはDelphiで作成。最終的にはこうなった。

検出した矩形の確認と編集を行うGUIはDelphiで作成

画面下の「操作」グループ内のVCLを左から右へ順にクリックして行けば、解答用紙画像から解答欄の矩形が取得・表示できる仕組み。

左から右へ順に操作して解答欄矩形の座標を取得する。

取得した解答欄矩形の座標は、画面右上に一覧形式で採点順に表示されるようにプログラミングした。

取得した座標の一覧を表示

横書き答案が指定された場合は、y座標の値が昇順になるよう並べ替え(y座標が同じなら、x座標でさらに昇順に並べ替え)。

縦書き答案が指定された場合は、x座標の値が降順になるよう並べ替え(x座標が同じなら、y座標でさらに昇順に並べ替え)。

こうすれば、座標の並び方が「ほぼ採点する順番になる」はず。なお、並べ替えはカンマで区切った解答欄矩形の座標を入れたStringListを対象として実行(解答欄数は多くても100未満のはず・・・だから、並べ替えの速度はまったく考えていない)。そのアルゴリズムは次の通り。まず、グローバルに使う変数、ソート用のプロパティと関数を準備。

  private
    { Private 宣言 }
    x1,x2:integer;
    y1,y2:integer;
    //Pythonから送られたデータを保存する
    strAnsList:TStringList;

var
  Form1: TForm1;

type TSStyle = (ssText,ssInteger);
var
  //ソート用のプロパティ
  fAscending : Boolean;
  fIndex : Integer; //項目番号
  fStyle : TSStyle; //テキストか整数か

implementation

uses
  System.UITypes;
function GetCommaText(aStr:String; aIndex:Integer):string;
  var
    subList:TStringList;
begin
  subList := TStringList.Create;
  subList.Delimiter := ',';
  subList.DelimitedText := aStr;
  Result := subList.Strings[aIndex];
  subList.Free;
end;
function MyCustomSort(List: TStringList; Index1, Index2: Integer): Integer;
begin
  case fStyle of
    ssText:begin
      Result:=CompareText(GetCommaText(List.Strings[Index1],
      fIndex),
      GetCommaText(List.Strings[Index2],fIndex));
    end;
    ssInteger:begin
      //一重ソート
      //Result:=StrToInt(GetCommaText(List.Strings[Index1],fIndex))
      //          -StrToInt(GetCommaText(List.Strings[Index2],fIndex));
      //二重ソート
      Result:=StrToInt(GetCommaText(List.Strings[Index1],fIndex))
                -StrToInt(GetCommaText(List.Strings[Index2],fIndex));
      if Result=0 then
        //-1することで1番目の項目がソートキーになる
        Result:=StrToInt(GetCommaText(List.Strings[Index1],fIndex-1))  
                  -StrToInt(GetCommaText(List.Strings[Index2],fIndex-1));
      if fAscending then
      begin
        Result:=Result*-1;
      end else begin
        Result:=Result*1;
      end;
    end;
  else
    //これを入れておかないとコンパイラが警告を表示する
    Result:=0;
  end;
end;

で、「解答欄座標を取得」ボタンがクリックされたら、PythonForDelphiを通じてPythonのScriptを内部的に実行して座標を取得し、上記関数を呼び出して並べ替えを実行、結果をMemo2に表示する。

procedure TForm1.btnGetSquareClick(Sender: TObject);
var
  //PythonのScriptを入れる
  strScrList:TStringList;
  //Pythonから送られたデータを保存する -> グローバル変数化
  //strAnsList:TStringList;
  //Sort
  i:integer;
  strFileName:string;
  strList:TStringList;
begin
  //初期化
  Memo1.Clear;
  //Scriptを入れるStringList
  strScrList:=TStringList.Create;
  //結果を保存するStringList
  strAnsList:=TStringList.Create;

  try
    //Python Script
    strScrList.Add('import cv2');
    strScrList.Add('import numpy as np');
    //strScrList.Add('img = cv2.imread("./ProcData/sample2.jpg")');
    strScrList.Add('img = cv2.imread(r"./ProcData/'+ExtractFileName(StatusBar1.SimpleText)+'")');
    strScrList.Add('gray = cv2.cvtColor(img, cv2.COLOR_BGR2GRAY)');
    strScrList.Add('gray = 255 - gray');
    strScrList.Add('ret, bin_img = cv2.threshold(gray, 20, 255, cv2.THRESH_BINARY)');
    strScrList.Add('contours, hierarchy = cv2.findContours(bin_img, cv2.RETR_LIST, cv2.CHAIN_APPROX_SIMPLE)');
    strScrList.Add('contours = list(filter(lambda x: cv2.contourArea(x) > '+cmbThreshold.Text+', contours))');
    strScrList.Add('for i in range(len(contours)):');
    strScrList.Add('    im_con = img.copy()');
    strScrList.Add('    x, y, w, h = cv2.boundingRect(contours[i])');
    strScrList.Add('    var1.Value =str(x)+","+str(y)+","+str(x+w)+","+str(y+h)');
    //Scriptを表示
    Memo1.Lines.Assign(strScrList);
    //Execute
    PythonEngine1.ExecStrings(Memo1.Lines);
    //結果を表示
    Memo2.Lines.Assign(strAnsList);
  finally
    //StringListの解放
    strAnsList.Free;
    strScrList.Free;
  end;

  strFileName:=ExtractFilePath(StatusBar1.SimpleText)+'Temp.csv';
  Memo2.Lines.SaveToFile(strFileName);

  strList := TStringList.Create;
  try
    for i := 0 to Memo2.Lines.Count-1 do
    begin
      strList.Add(Memo2.Lines[i]);
    end;
    //fAscending := True; //昇順で
    fAscending := False;
    fIndex := 1; //2番目の項目を
    fStyle := ssInteger; //整数型でソート
    strList.CustomSort(MyCustomSort); //ソート
    //データ抽出
    Memo2.Clear;
    for i := 0 to strList.Count - 1 do
    begin
      //Memo2.Lines.Add(GetCommaText(strList.Strings[i],fIndex));
      Memo2.Lines.Add(strList[i]);
    end;
  finally
    strList.Free;
  end;

end;

上記のアルゴリズムは、次のWebサイトに紹介されていた情報を元に作成。
カンマ区切りのデータの並べ替えは初めて行った。採点順に座標を並べたかったので、プログラムコードをよく読んで、二重ソートになるよう工夫した。
貴重な情報を投稿してくださった方に心から感謝申し上げます。

[delphi-users:1175] カンマ区切りのデータの並べ替え

https://groups.google.com/g/delphi-users/c/Ck2mQXNFTvw

4.矩形検出器の使い方

ここまでの操作で解答欄の座標はすべて取得できたはずなので、不要な矩形のデータをいかに効率よく削除するかを主眼に、GUIの操作方法を考えた。

まず、取得できた座標データの先頭にセットフォーカスし、そのデータが示す矩形を赤いラバーバンドで囲んで表示する。ユーザーは、ラバーバンドで囲まれた矩形を見て、その要・不要を判断。

この矩形は不要

不要な矩形であった場合は、「編集」ボタンをクリック。不要なデータを自動で選択状態に設定。

Memoの一行全部を選択状態に設定

手続きは次の通り。

procedure TForm1.BitBtn1Click(Sender: TObject);
var
  i:integer;
begin

  //行番号をLines[i]で取得
  i:=StrToInt(LBRow.Caption)-1;

  EditTF:= not EditTF;
  if EditTF then
  begin
    BitBtn1.Caption:='編集中';
    BitBtn1.Font.Color:=clRed;
    Memo2.ReadOnly:=False;
    btnSave.Enabled:=False;

    //i行目の文字全てを選択状態にしたい場合
    //先頭にカーソルをセット
    Memo2.SelStart:=Memo2.Perform(EM_LINEINDEX, i, 0);
    //全ての文字を選択
    Memo2.SelLength:=Length(WideString(Memo2.Lines[i]));
    //Memo2.Perform(WM_VSCROLL,SB_TOP,0); //先頭にスクロール

  end else begin

    BitBtn1.Caption:='編 集';
    BitBtn1.Font.Color:=clBlack;
    Memo2.ReadOnly:=True;
    Memo2.SelStart:=SendMessage(Memo2.Handle,EM_LineIndex,i,0);
    btnSave.Enabled:=True;
    Memo2Click(Sender);

  end;

  //SetFocus
  Memo2.SetFocus;

end;

Delete or Backspaceキーで不要なデータを削除すると同時に、Memoの行も削除する。で、ボタンを「編集」(=意味的には「編集したい場合はクリックせよ」)に戻す。次のデータをラバーバンドで囲む。この一連の動作がすべて自動的に流れ作業で行われるように手続きを作成。

コードは次の通り。

procedure TForm1.Memo2KeyUp(Sender: TObject; var Key: Word; Shift: TShiftState);
var
  LineNo:integer;
begin
  //現在、カーソルがある行を取得
  LineNo:=Memo2.Perform(EM_LINEFROMCHAR, UINT(-1), 0);
  //空欄なら行を削除
  if Memo2.Lines[LineNo]='' then
  begin
    Memo2.Lines.Delete(LineNo);
  end;
  //表示
  GetLinePos;
  if not EditTF then
  begin
    Memo2Click(Sender);
  end else begin
    BitBtn1Click(Sender);
  end;
end;
procedure TForm1.GetLinePos;
var
  CurPos,Line:Integer;
begin
  with Memo2 do
  begin
    CurPos:=SelStart;
    Line:=Perform(EM_LINEFROMCHAR, CurPos, 0);
    //LBRowは現在フォーカスがある行番号を表示するラベル
    LBRow.Caption:=Format('%d', [Line+1]);
    LBRow2.Left:=LBRow.Left+LBRow.Width;
    LBRow2.Caption:='行目';
  end;
end;
procedure TForm1.Memo2Click(Sender: TObject);
var
  i:integer;
  p1,p2:TPoint;

  function RemoveToken(var s:string;delimiter:string):string;
  var
    p:Integer;
  begin
    p:=Pos(delimiter,s);
    if p=0 then Result:=s
    else Result:=Copy(s,1,p-1);
    s:=Copy(s,Length(Result)+Length(delimiter)+1,Length(s));
  end;

  function GetTokenIndex(s:string;delimiter:string;index:Integer):string;
  var
    i:Integer;
  begin
    Result:='';
    for i:=0 to index do
      Result:=RemoveToken(s,delimiter);
  end;

begin

  if not EditTF then
  begin

    //座標を取得
    i:=Memo2.Perform(EM_LINEFROMCHAR, Memo2.SelStart, 0);

    //エラー対策
    if Memo2.Lines[i]='' then Exit;

    x1:=StrToInt(GetTokenIndex(Memo2.Lines[i],',',0));
    y1:=StrToInt(GetTokenIndex(Memo2.Lines[i],',',1));
    x2:=StrToInt(GetTokenIndex(Memo2.Lines[i],',',2));
    y2:=StrToInt(GetTokenIndex(Memo2.Lines[i],',',3));

    if Assigned(plImage1) then begin
      FreeAndNil(plImage1);
    end;

    //コンポーネントを生成し,イベントを定義し,位置を指定して画像を表示
    plImage1:=TplResizeImage.Create(Self);
    plImage1.Parent:=ScrollBox1;
    plImage1.TransEvent:=True;
    //クライアント座標をスクリーン座標へ変換
    //GetSystemMetrics(SM_CYCAPTION) -> タイトルバーの高さ
    //GetSystemMetrics(SM_CYFRAME) -> ウィンドウの枠幅
    p1.X:=x1-(GetSystemMetrics(SM_CYFRAME) div 2);
    p1.Y:=y1-GetSystemMetrics(SM_CYCAPTION)-(GetSystemMetrics(SM_CYFRAME) div 2);
    p2.X:=x2-(GetSystemMetrics(SM_CYFRAME) div 2);
    p2.Y:=y2-GetSystemMetrics(SM_CYCAPTION)-(GetSystemMetrics(SM_CYFRAME) div 2);
    p1:=Image1.ClientToScreen(p1);
    p2:=Image1.ClientToScreen(p2);
    plImage1.SetBounds(p1.X, p1.Y, p2.X-p1.X, p2.Y-p1.Y);

    //SelectedプロパティをTrueにするとラバーバンドとグラブハンドルが表示される
    plImage1.Selected := True;
    plImage1.BringToFront;

  end;

end;

ラバーバンドはMr.XRAYさんのWebサイトにあったplResizeImageを使わせていただいて作成。これまでにもどれだけ助けていただいたことか・・・。このような素晴らしい素材を提供し続けてくださっているMr.XRAYさんに今回も心から感謝申し上げます。

157_移動リサイズ可能な TImage   ラバーバンドとグラブハンドル

http://mrxray.on.coocan.jp/Delphi/plSamples/157_MoveResize_GrabHandle.htm

ラバーバンドで囲まれた矩形が必要な矩形であった場合は、下のMemo3へ「移動」ボタンをクリックしてデータを移す。で、次の矩形をラバーバンドで囲んで表示する。

次の矩形の要・不要を判断
必要な矩形であれば下のMemo3へ移動する

この作業を順次繰り返すと、最終的に必要な矩形の座標のみがMemo3に移動。不要な矩形の座標はすべて削除されることになる。

必要な矩形の座標のみ、採点順に取得できた!

最終的に過不足がないか・どうか、Memo3の先頭座標データをクリック、ラバーバンドで該当矩形を囲んで表示、下向きの矢印キーを次へ次へと押して、フォーカスを下の座標データへ移動、ラバーバンドを表示して確認、これを最後の座標データまで繰り返し。

採点順を含めて、必要な座標データがすべて揃っていることを先頭データから順に確認する。

必要な座標がすべて取得できていることを確認したら、「保存」ボタンをクリックして手書き答案採点ソフトが実行時に読み込む、様々な採点設定を記録するための iniファイルに解答欄の座標データを保存する。

データの保存

【任意の範囲を指定したい場合】

複数の解答欄を抱き合わせて、完全解答で正解としたい場合などに対応するため、任意の範囲を矩形選択できるようにした。

画面中央左の追加ボタンをクリックすると、画面の中央にラバーバンドが表示される。これを任意の位置へドラッグする。

追加ボタンをクリックしてラバーバンドを表示
画面の中央にラバーバンドを表示、これを任意の位置へドラッグ。

ボタンのCaptionは、自動で「取得」に変更。

ボタンのCaptionを変更

任意の範囲をラバーバンドで囲んだら(=範囲指定完了)、「取得」ボタンをクリック。取得された座標がボタンの右のEditに表示され、同時にクリップボードへ送られる。

任意の範囲を指定して座標を取得

Memo3上の「追加」ボタンをクリックすると、Memo3が編集可能になるので、採点順を確認して、適切な行に座標のデータを追加(クリップボードから貼り付けても、データを見ながら手動入力してもよい)。

適切な位置に座標のデータを入力する

ラバーバンドを使わなくても、解答欄の左上と右下を、それぞれポイントすればその座標をラベルに表示する機能も追加したので、上の図のように、Memo3を編集モードにして、座標を任意の行へ直接入力することも可能。

マウスでポイントした場所の座標をリアルタイムで表示する

クライアント座標の取得と表示を行う手続きは、次の通り。

procedure TForm1.Image1MouseMove(Sender: TObject; Shift: TShiftState; X,
  Y: Integer);
var
  PtInput:TPoint;
begin
  //スクリーン座標を取得
  GetCursorPos(PtInput);
  //で、そのコントロールのクライアント領域に対するカーソルの座標を取得
  PtInput := Image1.ScreenToClient(PtInput);

  //補正する必要はない(確認済み)
  //表示
  Label2.Caption:=
    Format(' クライアント座標  '+'X : %d, Y : %d', [PtInput.X, PtInput.Y]);
end;

【矢印キーの押し下げを拾う】

最も難しかったのが、フォーカスが「どこにあるか」で矢印キーの挙動を制御すること。以前にStringGridのセルのフォーカスの移動を制限した時に学んだ内容が今回も役に立った。

今回は、Memoにフォーカスがある場合と、ラバーバンドにフォーカスがある場合、さらにラバーバンドにフォーカスがある場合のうち、Shiftキーと同時に矢印キーが押し下げられているのか(=ラバーバンドの大きさの変更)、それとも矢印キーが単独で押し下げられているのか(=ラバーバンドの表示位置の移動)、この3パターンを見分けてそれぞれにあった動作を行わせたいと考えた。最終的には次のコードで対応。

  private
    { Private 宣言 }

    //ある(矢印他)キーが押されたことを知る
    procedure AppMessage(var Msg: TMsg; var Handled: Boolean);

上のように手続きを宣言して、Shift+Ctrl+Cで手続きを生成。

procedure TForm1.AppMessage(var Msg: TMsg; var Handled: Boolean);
var
  StrText: string;
begin
  //何かキーが押し下げられたら
  if Msg.message = WM_KEYDOWN then
  begin
    try
      if ActiveControl is TMemo then
      begin
        //キー操作を「通常動作」にするおまじない
        case Msg.Message of
          WM_USER + $0500:
          Handled := True;
        end;
      end else begin
        //上位ビットが1ならShiftキーが押されている
        if GetKeyState(VK_SHIFT) and $8000 <> 0 then
        begin
          if plImage1.Visible then
          begin
            //右矢印キー
            if Msg.wParam=VK_RIGHT then
            begin
              plImage1.Width := plImage1.Width + 1;
              Msg.wParam:=0;
            end;
            //左矢印キー
            if Msg.wParam=VK_LEFT then
            begin
              plImage1.Width := plImage1.Width - 1;
              Msg.wParam:=0;
            end;
            //上矢印キー
            if Msg.wParam=VK_UP then
            begin
              plImage1.Height := plImage1.Height - 1;
              Msg.wParam:=0;
            end;
            //下矢印キー
            if Msg.wParam=VK_DOWN then
            begin
              plImage1.Height := plImage1.Height + 1;
              Msg.wParam:=0;
            end;
          end;
        end else begin
          //Shiftキーは押されていない
          //対象を限定(どちらでも動いた)
          //if TplResizeImage(ActiveControl).Visible then
          if plImage1.Visible then
          begin
            //右矢印キー
            if Msg.wParam=VK_RIGHT then
            begin
              plImage1.Left := plImage1.Left +1;
              Msg.wParam:=0;
            end;
            //左矢印キー
            if Msg.wParam=VK_LEFT then
            begin
              plImage1.Left := plImage1.Left -1;
              Msg.wParam:=0;
            end;
            //上矢印キー
            if Msg.wParam=VK_UP then
            begin
              plImage1.Top := plImage1.Top - 1;
              Msg.wParam:=0;
            end;
            //下矢印キー
            if Msg.wParam=VK_DOWN then
            begin
              plImage1.Top := plImage1.Top + 1;
              Msg.wParam:=0;
            end;
            //Deleteキー
            if Msg.wParam=VK_DELETE then
            begin
              //plImage1を解放
              if Assigned(plImage1) then begin
                FreeAndNil(plImage1);
              end;
              Msg.wParam:=0;
            end;
          end;
        end;
      end;
    except
      on E: Exception do
      begin
        StrText := E.ClassName + sLineBreak + E.Message;
        Application.MessageBox(PChar(StrText), '情報', MB_ICONINFORMATION);
      end;
    end;
  end;
end;

plImage1が生成されないうちに上の手続きが呼ばれると、当然、一般保護違反のエラーが発生するので、FormCreate時にplImage1を生成しておく。

procedure TForm1.FormCreate(Sender: TObject);
var
  //Python39-32へのPath
  AppDataDir:string;
  i:integer;
begin

  //メモリーリークがあれば検出
  ReportMemoryLeaksOnShutdown:=True;

  //有効にする(忘れないこと!)
  Application.OnMessage := AppMessage;

  //[Enter]でコントロールを移動させるために、Form上のコンポーネント
  //より先にFormがキーボードイベントを取得する。
  KeyPreview:=True;

  //コンポーネントを生成 -> インスタンス(実体)をつくる
  // = 一般保護違反エラーの防止
  //plImage1はグローバル変数として宣言しているから未定義の識別子エラーは発生しない
  //でも、Create(生成)してからでなければ使えない!
  plImage1:=TplResizeImage.Create(Self);

  //編集フラグ(編集中ではない)
  EditTF:=False;
  PlusTF:=False;
  Memo2.ReadOnly:=True;

  //StatusBar1の設定
  StatusBar1.SimplePanel:=True;

  //Formを最大化して表示(幅も最大化される)
  Form1.WindowState:=wsMaximized;

  //Embeddable Pythonの存在の有無を調査
  AppDataDir:=ExtractFilePath(Application.ExeName)+'Python39-32';
  if DirectoryExists(AppDataDir) then
  begin
    //フォルダが存在したときの処理    
    PythonEngine1.AutoLoad:=True;
    PythonEngine1.IO:=PythonGUIInputOutput1;
    PythonEngine1.DllPath:=AppDataDir;
    PythonEngine1.SetPythonHome(PythonEngine1.DllPath);
    PythonEngine1.LoadDll;
    //PythonDelphiVar1のOnSeDataイベントを利用する
    PythonDelphiVar1.Engine:=PythonEngine1;
    PythonDelphiVar1.VarName:=AnsiString('var1');  //プロパティで直接指定済み
    //初期化
    PythonEngine1.Py_Initialize;
  end else begin    
    PythonEngine1.AutoLoad:=False;
  end;

  //面積の閾値の選択肢を設定
  for i := 1 to 200 do
  begin
    cmbThreshold.Items.Add(IntToStr(i*100));
  end;

  //画面のちらつきを防止する
  DoubleBuffered := True;

end;

で、メモリーリーク発生の原因とならないよう、アプリの終了時に忘れずに解放。

procedure TForm1.FormCloseQuery(Sender: TObject; var CanClose: Boolean);
begin
  //メモリーリークを防止する
  PythonEngine1.Py_Finalize;
  PythonDelphiVar1.Finalize;
  FreeAndNil(plImage1);
end;

5.まとめ

(1)矩形の検出は、OpenCVのfindContours関数を利用する。
(2)矩形の検出を回避するには「点線」を利用する。
(3)GUIはDelphiで作成し、必要な座標だけ保存できるように工夫。
(4)「フォーカスがどこにあるか」で矢印キーの動作を制御。
(5)コントロール生成のタイミングと確実な破棄にも注意する。

6.お願いとお断り

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Link Image click position with Grid control

「画像のクリック位置とグリッドコントロールの連動」

画像を表示したTImageの任意の1点をクリックしたら、そのY座標に応じてStringGridコントロールの適切なセルを選択するようなプログラムが書けないかなー。・・・と思って、実際に書いてみたら、あまりにも簡単に実現できてしまったお話。

1.やりたかったこと
2.作成したプログラム
3.まとめ
4.お願いとお断り

1.やりたかったこと

次のようなGUIのある採点プログラムを作成した。プログラムはスキャナーで読み込んだ複数枚の答案画像から、設問ごとに解答欄をかき集めて表示するもの(答案画像への書き戻しも可能)。で、採点作業をより一層効率的に行うには、各々の解答欄画像をクリックした際、自動的に採点結果を入力するGridコントロールのセルが選択されたらイイなーと思ったことが、この連動プログラムを書こうとしたきっかけです。

画像をクリックした時に得られるY座標を元に、Gridコントロールの最適なセルを選択したい!

2.作成したプログラム

まず、思ったことはTImageのOnMouseDownイベントを利用すればイイ(画像上でクリックした位置のX, Y座標が取得できる)ということです。早速、imgAnswerという名前をつけたTImageをクリックして選択し、OnMouseDownイベントの右側をダブルクリックして、imgAnswerMouseDown手続きを作成。

次のようなコードを書いてみました!

procedure TFormCollaboration.imgAnswerMouseDown(Sender: TObject;
  Button: TMouseButton; Shift: TShiftState; X, Y: Integer);
begin
  //imgAnswerの高さは、解答欄1つの高さ × 解答用紙数 だから
  //クリックした場所の(Y座標 div 解答欄1つの高さ) + 1 が解答用紙の番号になるはず
  OutPutDebugString(PChar(IntToStr((Y div 解答欄1つの高さ) + 1)));   
end;

実行(F9)して、確認。

No,5の解答欄をクリックすると、確かに「5」と表示されている! やった☆

必要と思われる変数 i, j を宣言して・・・
あとは Gridコントロールへ SetFocus するコードを書くだけ!

procedure TFormCollaboration.imgAnswerMouseDown(Sender: TObject;
  Button: TMouseButton; Shift: TShiftState; X, Y: Integer);
var
  i,j:integer;
begin
  //imgAnswerの高さは、解答欄1つの高さ × 解答用紙数 だから
  //クリックした場所の(Y座標 div 解答欄1つの高さ) + 1 が解答用紙の番号になるはず
  OutPutDebugString(PChar(IntToStr((Y div 解答欄1つの高さ) + 1)));
  i:= (Y div 解答欄1つの高さ) + 1;
  //SetFocus
  j:= StrToInt(現在選択している解答欄の番号);
  StringGrid1.Col:= j;
  StringGrid1.Row:= i;
  StringGrid1.SetFocus;   
end;

上のコードでは、わかりやすさのため変数(記号)ではなく、そのかわりに「解答欄1つの高さ」等のように説明の文字列で記述しています。また、採点ミスを防止する観点から、Gridコントロールに表示する入力可能な列は、現在選択(=画像として表示)している解答欄に対応する1列のみとしています。

これで理想としていたカタチの採点プログラムに一歩近づけたように思います。ユーザーに案内したい採点方法は、サっと見て全員が良く出来ている設問であれば、最初に全員正解として得点を一括自動入力し、誤りの解答のみ、解答欄画像を見ながらチェックしてクリック、自動選択された採点欄のセルにゼロ(得点)を入力する方法です。

3.まとめ

案ずるよりナントカといいますが、ほんとうにその通りで、内心、ずっとできるかなー? なんて思っていたことが、案外、基本的な知識だけで簡単に実現できてしまいました!

//Integer 型で、割り算をしたいときは、整数除算の演算を行う div を使う
A div B  //A ÷ B の商が取得できる

あとは、やりたいことを実現するアルゴリズムを考えるだけですね!
プログラミングしていて、いちばんしあわせで、楽しい時間を過ごせました☆

【注意!】
画像の表示倍率の変更が伴う場合には、表示倍率に合わせてプログラムの変更が必要
です。完璧には動作しませんが、ある程度使える(と思われる)表示倍率の変更に対応するコードは次の通りです(クリック位置が画像の下へ行くほど、誤差が大きくなります)。

procedure TFormCollaboration.imgAnswerMouseDown(Sender: TObject;
  Button: TMouseButton; Shift: TShiftState; X, Y: Integer);
var
  i,j,w:integer;
  k:double;
begin
  //imgAnswerの高さは、解答欄1つの高さ × 解答用紙数 だから
  //クリックした場所の(Y座標 div 解答欄1つの高さ) + 1 が解答用紙の番号になるはず
  OutPutDebugString(PChar(IntToStr((Y div 解答欄1つの高さ) + 1)));
  i:= (Y div 解答欄1つの高さ) + 1;
  //表示倍率が100%の時
  if Edit1.Text='100' then
  begin
    i:=(Y div 解答欄1つの高さ)+1;  //このアルゴリズムは記録として残したい
  end else begin
    //表示倍率が100%ではない時
    k:= 解答欄1つの高さ * (StrToFloat(Edit1.Text)/100);
    i:=Ceil(Float(Y)/k);  // <- とりあえずこれで使えるカモ?
  end;

4.お願いとお断り

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Mark Sheet Reader (Basic version)

「マークシートリーダーをつくる(基礎編)」

DelphiでGUIを作成、マークシート画像はPythonにインストールしたOpenCVとNumpyで読み取り&計算処理して、結果をMemoに表示するマークシートリーダーの練習プログラム。

0.準備
1.使用するプログラムとマークシート画像について
2.マークシート画像を読み込む
3.マークシート読み取り処理のアルゴリズム
4.マークシート読み取り処理の実際(Object Pascalのコード)
5.さらに進化
6.著作権表示の記載方法
7.お願いとお断り

ここで紹介している練習用プログラムを、実際の採点業務で使用できるようにした拙作マークシートリーダーです。

0.準備

マークシートリーダー作成にあたって、以下の事前準備が必要です。

・PythonForDelphiのインストール
・Embeddable Pythonのダウンロードと必要なライブラリのインストール
(作業後、このプログラムへの埋め込み用にフォルダ名を「Python39-32」に変えて、このプログラム(マークシートリーダー)のexeがある場所へコピーする)
・アプリケーションの表示画面のリサイズ対応(縦編)

(いずれも、当Blogの記事で過去に紹介)

重要 上の記事の手順で、OpenCVとNumpyをインストールしたEmbeddable Pythonが入ったフォルダを「Python39-32」という名前で、以下のフォルダ内にコピーする。

C:\Users\ xxx \ Project1.dprojファイルのあるフォルダ \Win32\Debug\

1.使用するプログラムとマークシート画像について

当Blogの過去記事『~主として「高さ」の変更に関する覚書~』で作成したDelphiのGUIをそのまま使用します。

必要なVCLとその構造(親子関係)

画面サイズの変更に対応できるよう、以下のコードを記述。

unit Unit1;

interface

uses
  Winapi.Windows, Winapi.Messages, System.SysUtils, System.Variants,
  System.Classes, Vcl.Graphics, Vcl.Controls, Vcl.Forms, Vcl.Dialogs,
  Vcl.ExtCtrls, Vcl.Grids, Vcl.StdCtrls;

type
  TForm1 = class(TForm)
    Panel1: TPanel;
    Panel2: TPanel;
    Panel3: TPanel;
    Splitter1: TSplitter;
    ScrollBox1: TScrollBox;
    Image1: TImage;
    Memo1: TMemo;
    procedure FormCreate(Sender: TObject);
    procedure FormResize(Sender: TObject);
    procedure Splitter1Moved(Sender: TObject);
  private
    { Private 宣言 }
    //Panel1の幅とFormの高さを記憶する変数
    intPH, intFH:integer;
    //Formの表示終了イベントを取得
    procedure CMShowingChanged(var Msg:TMessage); message CM_SHOWINGCHANGED;
  public
    { Public 宣言 }
  end;

var
  Form1: TForm1;

implementation

{$R *.dfm}

{ TForm1 }

procedure TForm1.CMShowingChanged(var Msg: TMessage);
begin
  inherited; {通常の CMShowingChagenedをまず実行}
  if Visible then
  begin
    Update; {完全に描画}
    //Formの表示終了時に以下を実行
    Panel1.Height:=intPH;
    intPH:=Panel1.Height;
    intFH:=Form1.Height;
  end;
end;

procedure TForm1.FormCreate(Sender: TObject);
begin
  //Panel1とFormの高さを記憶する変数を初期化
  intPH:=200;
  intFH:=480;
end;

procedure TForm1.FormResize(Sender: TObject);
begin
  //比率を維持してPanel1の高さを変更
  Panel1.Height:=Trunc(Form1.Height * intPH/intFH);
end;

procedure TForm1.Splitter1Moved(Sender: TObject);
begin
  //Panel1とFormの高さを取得
  intPH:=Panel1.Height;
  intFH:=Form1.Height;
end;

end.

マークシート画像は、以下の画像を使用。

「ms01.Jpg」

マークシート画像は、以下の場所に「MarkSheet」という名前のフォルダを作成して、その中に保存。

C:\Users\ xxx \ Project1.dprojファイルのあるフォルダ \Win32\Debug\Marksheet

2.マークシート画像を読み込む

Delphiを起動して、Project1.dproj(マークシート読み取り用GUIの保存してあるフォルダ内のDelphiのプロジェクトファイル)を開き、Panel3をクリックして選択しておいて、Panel3上にButton1を作成。Button1のNameプロパティはButton1のまま、Captionプロパティを「画像を表示」に変更。Button1の位置は下図を参照。

Captionプロパティを「画像を表示」に変更
Button1の位置は画面下・Panel3の左に寄せる

OpenDialog1をForm上に置く。

OpenDialogをダブルクリック
Form上のOpenDialog1

次に、Form上のButton1をダブルクリックして、procedure TForm1.Button1Click(Sender: TObject);を作成。

procedure TForm1.Button1Click(Sender: TObject);
begin

end;

作成した手続きではJpeg画像を扱うので、画面を上にスクロールして、implementation部の下に Vcl.Imaging.Jpeg を uses する。

implementation

uses
  Vcl.Imaging.Jpeg; //Jpeg画像を読み込む

{$R *.dfm}

Button1Clickプロシージャにvar宣言を追加して、Jpeg画像読み込み用の変数jpgを宣言。

procedure TForm1.Button1Click(Sender: TObject);
var
  jpg: TJPEGImage;
begin

end;

beginとend;の間に、以下のコードを記述。

  //OpenDialogのプロパティはExecuteする前に設定
  With OpenDialog1 do begin
    //表示するファイルの種類を設定
    Filter:='JPEG Files (*.jpg, *.jpeg)|*.jpg;*.jpeg';
    //データの読込先フォルダを指定
    InitialDir:=ExtractFilePath(Application.ExeName)+'MarkSheet';
  end;

  if not OpenDialog1.Execute then Exit;  //キャンセルに対応
  //オブジェクトを生成
  jpg := TJPEGImage.Create;
  try
    //読み込み
    jpg.LoadFromFile(OpenDialog1.FileName);
    //Image1に表示
    Image1.Picture.Assign(jpg);
  finally
    //オブジェクトを破棄
    jpg.Free;
  end;

上書き保存(Ctrl+S)して、実行(F9)。データの読み込み先を指定しておくと、目的のフォルダが一発で開くので便利。

マークシート画像が表示される。が、ごく一部しか見えない。

これはImage1のAutoSizeプロパティがデフォルトFalseに設定されているため。 Image1 のAutoSizeプロパティをTrueにするコードを追加(オブジェクトインスペクタで Image1 のAutoSizeプロパティを 直接指定してもOK)。

  try

    //読み込み
    jpg.LoadFromFile(OpenDialog1.FileName);
    //Image1に表示
    Image1.Picture.Assign(jpg);

    //追加
    Image1.AutoSize:=True;

  finally

上書き保存(Ctrl+S)して、実行(F9) 。画像の表示を確認する。

うまくいったように見える。Formを最大化してSplitterを下げて、さらに確認。
画像の表示位置を修正する必要がありそうだ

画像が表示される位置を、画面の左側へ移動するコードを手続きの先頭に追加する。

begin

  //Imageの表示位置を指定
  Image1.Top := 25;
  Image1.Left := 40;

  //OpenDialogのプロパティはExecuteする前に設定しておくこと
  With OpenDialog1 do begin

上書き保存(Ctrl+S)して、実行(F9) 。画像の表示を再度確認する。

ほぼイメージに近い出来栄え?

参考:画像読み込みのコード(全体)

implementation

uses
  Vcl.Imaging.Jpeg; //Jpeg画像を読み込む

{$R *.dfm}

{ TForm1 }

procedure TForm1.Button1Click(Sender: TObject);
var
  jpg: TJPEGImage;
begin

  //Imageの表示位置を指定
  Image1.Top := 25;
  Image1.Left := 40;

  //OpenDialogのプロパティはExecuteする前に設定しておく
  With OpenDialog1 do begin
    //表示するファイルの種類を設定
    Filter:='JPEG Files (*.jpg, *.jpeg)|*.jpg;*.jpeg';
    //データの読込先フォルダを指定
    InitialDir:=ExtractFilePath(Application.ExeName)+'MarkSheet';
  end;

  if not OpenDialog1.Execute then Exit;  //キャンセルに対応
  //オブジェクトを生成
  jpg := TJPEGImage.Create;
  try

    //読み込み
    jpg.LoadFromFile(OpenDialog1.FileName);
    //Image1に表示
    Image1.Picture.Assign(jpg);

    //追加
    Image1.AutoSize:=True;

  finally
    //オブジェクトを破棄
    jpg.Free;
  end;

end;

3.マークシート読み取り処理のアルゴリズム

まず最初にマークシートの左上にある特徴点(マーカー)画像: ■■■(トリプルドット)をOpenCVのテンプレートマッチングで探す。

特徴点(マーカー)画像が見つかったら、 特徴点(マーカー)画像左上位置を基準にして、「マークシートの周囲の枠部分のみ」を矩形選択して切り出し。

参考①:あらかじめ測定しておいた特徴点(マーカー)画像の位置(単位はピクセル)
左上のX座標=65
左上のY座標=28
右下のX座標=121(マークシート矩形の座標計算には使用しない)
右下のY座標=43(マークシート矩形の座標計算には使用しない)

参考②:あらかじめ測定しておいたマークシート矩形の座標 (単位はピクセル)
左上の X座標=65
左上の Y座標=61
右下の X 座標=419
右下の Y 座標=497

参考 上記の各座標をマークシート画像から計測し、テンプレートとして用意したマークシートごとに登録(座標値を保存)するプログラムを別途作成した。なお、座標原点(0,0)は画像の左上である(使い慣れた数学の座標系とちょっと違うことに注意!)。

赤が左上、青が右下の座標で、緑がマークシート枠の矩形

この座標を元にして、 特徴点(マーカー)画像からの距離で、マークシート矩形を切り出す。

マークシート矩形において、(W1、H1)が左上位置を、(W2、H2)が右下位置を示す座標となる。

上の例では、マークシートの列数は「1」、行数は「10」と数えることにする。列数が「1」の場合、W1は「ほぼ0(ゼロ)」になり、値としての意味がないように思われるが、このプログラムを実用化した場合は、下の例のように、複数の列があるマークシートを用いることになるので、2列めのマークシート矩形の座標は、左上が(W3,H3)、右下が(W4,H4)、3列めのマークシート矩形の座標は左上が (W5,H5)、右下が(W6,H6)のように指定でき、W値が0ではない場合が生じる。

マークシート用紙の作成に、私はWordを用いたが、Wordのバージョンによっては、あろうことか、上書き保存時に、マーカー画像(■■■)の位置が数ミリ程度、勝手に左へ移動するという予期しないトラブル(Wordの仕様?)が発生。このような点も考慮して、W1の座標は敢えて(0として)定数化していない。

マークシートの作成例(実験用に使用)
列数3、1列あたりの行数25、1行あたりの選択肢の数は16
この用紙の場合、総マーク数は3×25×16=1200個/枚となる
つまり用紙1枚につき、1200回マークの有無の判定が必要

実際の作業では、マークシート画像をスキャナーで読み取って、グレースケールのJpeg画像としてデータ化するので、マークシート(用紙)に「しわ」があったり、状況によっては「折られ」ていたりする関係上、読み取り画像を1枚ずつ比較すると、その上下・左右にどうしても微妙なブレ・ズレが生じてしまう。しかし、同じ印刷機で、同時に印刷したマークシートであれば、特徴点(マーカー)画像とマークシートの行列位置の関係は絶対であり、これが1枚ごとに変化することはありえない。つまり、スキャンした画像が余程大きく傾きでもしていない限り、テンプレートマッチングで、特徴点(マーカー)画像さえ発見できれば、予め測定・記録しておいた座標の相対的位置関係からマークシート矩形は容易に切り出せる。

次の画像は、別データとして保存してある特徴点(マーカー)画像を元に、OpenCVのテンプレートマッチングをマークシート画像に対して行ったもの。類似度の高い部分を赤枠で囲んで示すようプログラミングしている。

マーカー
テンプレートマッチングを行った画像

次に、上に述べた方法で計算したマークシート矩形を列単位で切り出す。切り出した画像は、マークの(=列)数・行数の整数倍のサイズになるようリサイズする(これは、このあと画像を細かく分割して処理するので、切り出す行や列の計算を簡単にするための工夫 → 整数倍にリサイズすれば、列数分&行数分廻すLoop処理の中で処理しやすい)。

列単位で切り出したマークシート矩形

マークシート用紙は、一般的なマークシート用紙のような厚みのある(高級感あふれる)専用紙でなく、ホームセンターでも「売ってない!」ような見た目が灰色の再生紙を用いている。このためか、あちらこちらにゴミのような黒い点や、細いすじが入っていることがある。これらの黒点やすじを判定プログラムが「マークあり」と誤認しないようにするため、次に「平滑化(ボカシ)処理」を行う。

平滑化(ボカシ)処理には「ガウシアンフィルタ」を用いた。これは、正規(ガウス)分布を利用して「注目画素からの距離に応じて近傍の画素値に重みをかける」という処理を行うもので、自然な平滑化が実現できるとのこと。次の画像は、上の切り出したマークシート矩形に対して、この平滑化処理を行ったもの。

img = cv2.GaussianBlur(img,(35,35),0) ※引数は奇数を指定する必要がある

引数の値が大きいほど正規分布のピークが低く、広がりは広くなる(=より均一に、より全体にボカシがかかる)。ここでは引数をかなり大きめにとり「35」としている。こうすることで、ゴミやシミを画像からほぼ完全に除去できる。

ガウシアンフィルタ処理を行い、ゴミやシミを除去する

さらに、この画像を「ある閾値」を元に白と黒に二値化処理する。この処理で枠線やマークされていないマーク部分が「すべて白」になり、鉛筆で濃くマークされている部分だけが「黒」になった白黒画像が得られる。当初は、以下のように引数を指定して二値化画像を作成した。

ret, img = cv2.threshold(img, 140, 255, cv2.THRESH_BINARY)

現在は、次のように閾値の設定を自動で行う「大津の二値化」を利用している。

ret, img = cv2.threshold(img, 0, 255, cv2.THRESH_BINARY + cv2.THRESH_OTSU)

式中の第2引数は閾値だが、大津の二値化では自動計算させるので0(ゼロ)を指定。第3引数は0-255の256段階でグレースケール化しているから、最大値の255を指定する。これによって、次の画像が得られる。

大津の二値化で作成した白黒画像

さらに、これを白黒反転させた画像を作成する。式は以下の通り。

img = 255 - img

これにより、次の画像が得られる。

マーク部分を「白」に変換した画像

次に、この画像を「行」単位に分割して切り出す。

1行目を切り出した画像

次に、選択肢の数で、均等に分割する。ここでは選択肢の数が「8」なので、上の画像を等幅で8個に分割する。下は、その1個目の切り出し画像である。

このように細かく分割して切り出した画像1つ1つについて、画素が白なら値を255・黒なら0として面積あたりの合計値を計算し、マークされている部分の面積の中央値を算出、これを閾値として、下の式では、マークされている(白い部分の)面積が他より3倍以上あるものを「マークあり!」と判定している。この数値が大きいほど、判定はきびしくなる。

result.append(area_sum > np.median(area_sum) * 3)

このマークシート読み取り処理のアルゴリズムの主要部分は全て、GitHubの次の記事に紹介されていたものです。素晴らしい記事を投稿してくださった作成者の方に、心から感謝申し上げます。

PythonとOpenCVで簡易OMR(マークシートリーダ)を作る

URL:https://qiita.com/sbtseiji/items/6438ec2bf970d63817b8

参考 列が複数あるマークシートの読み取り処理について

上記記事では、特徴点(マーカー)画像をマークシートの上下に複数個用意し、テンプレートマッチングを行っています。確かに、マークシートの左上と右下に特徴点(マーカー)画像を用意すれば、より簡単にマークシート矩形の切り出しが可能でした。これは素晴らしいアイデアです。

私も当初は特徴点(マーカー)画像を複数個用意してマークシートを作成していたのですが、列数を2列、3列と増やすと、さまざまな問題が生じることに気が付きました。

第一に、特徴点(マーカー)画像を変えないと、列ごとの切り出しが困難だということです。つまり、3列あるマークシートでは、最も左の列用の特徴点を■■■、真ん中の列用の特徴点を■□■、最も右側の列用の特徴点を■□□として、Loop処理の中でテンプレートマッチングに使用する特徴点(マーカー)画像を切り替えて、目的とするマークシート矩形を切り出せるようにしてみた(□□■や□□□も含めればさらに多くの列が作成可能)のですが、この方法では、うまく特徴点(マーカー)画像を認識してくれないことがあり、安定感に欠ける気がしました。

第二に、万一、回答者が特徴点(マーカー)画像に意図的に変更を加える(例: ■□□ → ■■□)等の暴挙に出た場合、対応が難しいこと。

第三に、マーカー画像が多いと、マークシートの見た目もなんだか騒がしくて、個人的にはマーカー画像を複数個用意する方法はなるべく避けたいと考えたこと。

これらの理由から、「なんとか特徴点(マーカー)画像が1個で済まないか」と、私なりに工夫して、当ブログで紹介した方法を考えました。

創意工夫の過程で一時は、回答者が意図的に変更できるようなマーカー(例: □ )がなければOKかとも思い、別の特徴点(マーカー)画像も使ってみたのですが、それはそれでまた別の問題を起こすことがわかりました。

例えば、下のように、ヒトなら簡単に両者の違いを判別できる画像を用意します。

用意した特徴点(マーカー)画像

これに対して、左側の画像でテンプレートマッチングを行うと・・・

機械はヒトと違うモノの見方をしていることが、大変良くわかりました。

4.マークシート読み取り処理の実際(Object Pascalのコード)

Form上に、Buttonを1つ、PythonForDelphi関連のVCLコンポーネントを3つ配置する。Button2は、Panel3の中央付近に置き、Nameプロパティはそのまま、Captionプロパティを「読み取り」に変更する。PythonForDelphi関連のVCLコンポーネントは、すべて非ビジュアルコンポーネントなので、位置はどこでもよく、Nameプロパティもデフォルトのままとする。 PythonForDelphi関連で配置するコンポーネントは以下の通り。

以下のように、PythonForDelphi関連のコンポーネントのプロパティとイベントを設定

・PythonEngine1のAutoLoadプロパティはFalseに設定。

・PythonEngine1のDllNameプロパティはpython39.dllを指定(埋め込みPythonのバージョンに合わせて設定する)。ここでは3.9.9以下のバージョンのPythonでないとNumpyが非対応(2021年12月現在)であり、用意した埋め込みPythonのバージョンは3.9.9なのでpython39.dllに変更する。

・PythonEngine1のIOにはPythonGUIInputOutput1を指定。

・PythonGUIInputOutput1は他で利用するならプロパティのOutPutに「Memo1」などとするところだけれど、ここでは何も設定しない。

・PythonDelphiVar1のVarNameはプログラムコードの記述に合わせて「var1」とする。var1と入力後、Enterで確定すること!(青く反転表示されるのを確認する)

Formが生成される時、PythonEngine1を初期化する。Formのタイトルバーの上をクリックして選択し、オブジェクトインスペクタのイベントタブをクリックしてOnCreateイベントの右に表示されている「FormCreate」をダブルクリックして、コードの入力に切り替える。

参考:エラー対応方法(20220724追加)

P4D使用時にImageコントロールの bsClear を使うとエラーが発生します。

[dcc32 エラー] Unit02_MSReader.pas(1199): E2010 'TBrushStyle' と 'Enumeration' には互換性がありません

これはPythonEngine.pasの中で bsClear が定義(使用)されているためです。次に示す例のように、Image1の方のbsClearを明示的に Vcl.Graphics.bsClear として対応します。

  //矩形を描画
  with Image1 do
  begin
    //Canvas.Brush.Style:=bsClear;
    Canvas.Brush.Style:=Vcl.Graphics.bsClear;
  end;

以上、エラー対応でした。解説を続けます。

表示は次のようになっている(はず)。ここにコードを追加する。

procedure TForm1.FormCreate(Sender: TObject);
begin

  //Panel1とFormの高さを記憶する変数を初期化
  intPH:=200;
  intFH:=480;

end;

追加するコード

procedure TForm1.FormCreate(Sender: TObject);
var
  //Python39-32へのPath(追加)
  AppDataDir:string;
begin

  //Panel1とFormの高さを記憶する変数を初期化
  intPH:=200;
  intFH:=480;

  //以下のコードを追加
  //embPythonの存在の有無を調査
  AppDataDir:=ExtractFilePath(Application.ExeName)+'Python39-32';

  if DirectoryExists(AppDataDir) then
  begin
    //フォルダが存在したときの処理
    MessageDlg('Embeddable Pythonが利用可能です。',
      mtInformation, [mbOk] , 0);
    PythonEngine1.AutoLoad:=True;
    PythonEngine1.IO:=PythonGUIInputOutput1;
    PythonEngine1.DllPath:=AppDataDir;
    PythonEngine1.SetPythonHome(PythonEngine1.DllPath);
    PythonEngine1.LoadDll;
    //PythonDelphiVar1のOnSeDataイベントを利用する
    PythonDelphiVar1.Engine:=PythonEngine1;
    PythonDelphiVar1.VarName:=AnsiString('var1');  //プロパティで直接指定済み
    //初期化
    PythonEngine1.Py_Initialize;
  end else begin
    MessageDlg('Embeddable Pythonが見つかりません!',
      mtInformation, [mbOk] , 0);
    PythonEngine1.AutoLoad:=False;
  end;

end;

ここでMessageDlgを使用しているので、以下のように System.UITypes を uses に追加する。

implementation

uses
  Vcl.Imaging.Jpeg, System.UITypes;  // <-追加

  //Jpeg:Jpeg画像を読み込む
  //System.UITypesはMessageDlgの表示に必要

{$R *.dfm}

プライベートメンバー変数 intCnt(カウンタとして利用する)と strAnsList(Pythonから返された計算結果を保存する) を2つ、Private宣言で新しく宣言する。

  private
    { Private 宣言 }

    //for Python(追加)
    //Counter
    intCnt:integer;
    //Pythonから送られたデータを保存
    strAnsList:TStringList;

    //Panel1の幅とFormの高さを記憶する変数
    intPH, intFH:integer;
    //Formの表示終了イベントを取得
    procedure CMShowingChanged(var Msg:TMessage); message CM_SHOWINGCHANGED;

  public
    { Public 宣言 }
  end;

Form上のButton2(読み取りボタン)をダブルクリックして、手続きを作成し、以下の内容を入力する。

procedure TForm1.Button2Click(Sender: TObject);
var
  StrList:TStringList;
  strJCnt,strColCnt,strRowCnt,strSelCnt:String;
  TopLX, TopLY, TLX1, TLY1, BRX1, BRY1:integer;
  strPicName:string;
begin

  //初期化
  Memo1.Clear;
  intCnt:=1;

  //座標
  TopLX:=65;
  TopLY:=28;
  //BtmRX:=121;
  //BtmRY:=43;
  TLX1:=65;
  TLY1:=61;
  BRX1:=419;
  BRY1:=497;

  //マークシート数Check(+1することを忘れない)
  strJCnt:=IntToStr(2);

  //列数Check(+1することを忘れない)
  strColCnt:=IntToStr(2);

  //1列あたりの行数Check
  strRowCnt:=IntToStr(10);

  //選択肢数Check
  strSelCnt:=IntToStr(8);

  //マークシート名
  strPicName:='ms';

  //結果を保存するStringList
  strAnsList := TStringList.Create;

  //Scriptを入れるStringList
  StrList := TStringList.Create;

  try

    //Python Script
    StrList.Add('import cv2');
    StrList.Add('import numpy as np');

    //for JPN(日本語に対応)
    StrList.Add('def imread(filename, flags=cv2.IMREAD_GRAYSCALE, dtype=np.uint8):');
    StrList.Add('    try:');
    StrList.Add('        n = np.fromfile(filename, dtype)');
    StrList.Add('        img = cv2.imdecode(n, flags)');
    StrList.Add('        return img');
    StrList.Add('    except Exception as e:');
    StrList.Add('        return None');

    //マーカー画像を読み込む
    StrList.Add('template = imread("marker.png", cv2.IMREAD_GRAYSCALE)');

    //マークシートの枚数
    StrList.Add('for j in range(1,'+strJCnt+'):');

    //列数
    StrList.Add('    for i in range(1,'+strColCnt+'):');

    //マークシートへのパスを取得
    StrList.Add('        if j < 10:');
    StrList.Add('            MS_Name = r".\Marksheet\'+ strPicName +'0"+ str(j) +".jpg"');
    StrList.Add('        else:');
    StrList.Add('            MS_Name = r".\Marksheet\'+ strPicName +'"+ str(j) +".jpg"');

    //画像を読み込む
    StrList.Add('        img = imread(MS_Name)');
    //画像をグレースケールで読み込む
    StrList.Add('        img_gray = imread(MS_Name, 0)');

    //テンプレートマッチングの実行(比較方法cv2.TM_CCORR_NORMED)
    StrList.Add('        result = cv2.matchTemplate(img, template, cv2.TM_CCORR_NORMED)');

    //類似度が最小,最大となる画素の類似度、位置を調べ代入する
    StrList.Add('        min_val, max_val, min_loc, max_loc = cv2.minMaxLoc(result)');
    //最も似ている領域の左上の座標を取得
    StrList.Add('        top_left = max_loc');
    StrList.Add('        if i == 1:');

    //補正値を取得(高さ)
    StrList.Add('            h1 = ' + IntToStr(TLY1 - TopLY));
    StrList.Add('            h2 = ' + IntToStr(BRY1 - TopLY));
    //補正値を取得(幅)
    StrList.Add('            w1 = ' + IntToStr(TLX1 - TopLX));
    StrList.Add('            w2 = ' + IntToStr(BRX1 - TopLX));

    //矩形の左上の座標を計算 [0]-> X, [1]-> Y
    StrList.Add('        TL = (top_left[0] + w1, top_left[1] + h1)');
    //矩形の右下の座標を計算
    StrList.Add('        BR = (top_left[0] + w2, top_left[1] + h2)');
    //画像を切り出し img[top_Y : bottom_Y, left_X : right_X]
    StrList.Add('        img = img_gray[TL[1] : BR[1], TL[0] : BR[0]]');

    //選択肢数
    StrList.Add('        n_col = '+ strSelCnt);

    //解答欄1列あたりの行数
    StrList.Add('        n_row = '+ strRowCnt);
    StrList.Add('        margin_top = 0');
    StrList.Add('        margin_bottom = 0');
    StrList.Add('        n_row = n_row + margin_top + margin_bottom');

    //マークの列数・行数の整数倍のサイズになるようリサイズ
    StrList.Add('        img = cv2.resize(img, (n_col*100, n_row*100))');

    //保存して確認
    //StrList.Add('        cv2.imwrite("01_ReSize.png", img)');

    //平滑化の度合い
    StrList.Add('        img = cv2.GaussianBlur(img,(35,35),0)');

    //保存して確認
    //StrList.Add('        cv2.imwrite("02_GaussianBlur.png", img)');

    //二値化の閾値
    //50を閾値として2値化
    //imgはグレースケール画像でなければならない
    //第2引数はしきい値で,
    //画素値を識別するために使用(指定)
    //第3引数は最大値でしきい値以上
    //(指定するフラグ次第では以下)の値を持つ
    //画素に対して割り当てられる値
    //StrList.Add('        ret, img = cv2.threshold(img, 140, 255, cv2.THRESH_BINARY)');

    //大津の二値化で閾値の設定を自動化
    //第1引数には画像データを設定
    //(グレースケール画像でなければならない)
    //第2引数はしきいだが自動計算させるので0(ゼロ)を指定
    //第3引数は0-255の256段階でグレースケール化しているから
    //最大値の255を指定
    StrList.Add('        ret, img = cv2.threshold(img, 0, 255, cv2.THRESH_BINARY + cv2.THRESH_OTSU)');

    //保存して確認
    //StrList.Add('        cv2.imwrite("03_threshold.png", img)');

    //白黒を反転
    StrList.Add('        img = 255 - img');

    //保存して確認(追加)
    StrList.Add('        cv2.imwrite("04_threshold.png", img)');

    //全マークを判定
    StrList.Add('        result = []');
    StrList.Add('        for row in range(margin_top, n_row - margin_bottom):');
    StrList.Add('            tmp_img = img [row*100:(row+1)*100,]');
    StrList.Add('            area_sum = []');
    StrList.Add('            for col in range(n_col):');
    StrList.Add('                area_sum.append(np.sum(tmp_img[:,col*100:(col+1)*100]))');
    StrList.Add('            result.append(area_sum > np.median(area_sum) * 3)');

    //判定結果を出力
    StrList.Add('        for x in range(len(result)):');
    StrList.Add('            res = np.where(result[x]==True)[0]+1');
    StrList.Add('            if len(res)>1:');
    StrList.Add('                var1.Value = "99"');
    StrList.Add('            elif len(res)==1:');
    StrList.Add('                s = str(res)');
    StrList.Add('                var1.Value = s[1]');
    StrList.Add('            else:');
    StrList.Add('                var1.Value = "999"');

    //Execute
    PythonEngine1.ExecStrings(StrList);

    //結果を表示
    Memo1.Lines.Assign(strAnsList);

    //Userへ案内
    MessageDlg('読み取り完了!', mtInformation, [mbOk] , 0);

  finally
    //解放
    StrList.Free;
    strAnsList.Free;
  end;

end;

Pythonから返された計算結果を受け取るため、PythonDelphiVar1のOnSetDataイベントの手続きを作成する。Form上のPythonDelphiVar1をクリックして選択し、オブジェクトインスペクタのOnSetDataイベントの右側をダブルクリックして、コード入力画面で以下の内容を入力する。

procedure TForm1.PythonDelphiVar1SetData(Sender: TObject; Data: Variant);
begin
  //値がセットされたら動的配列に値を追加
  strAnsList.Add(Data);
  intCnt:=intCnt+1;
  Application.ProcessMessages;
end;
表示の「999」は空欄、「99」は複数マークであることを意味する。

上書き保存(Ctrl+S)して、実行(F9)。次の画像のように、マークシートが正しく読み取り処理されることを確認する。

複数マークを許可する場合には、判定結果を出力する部分のコードを次のように変更する。マークシートの読み取り結果をCSVファイルに出力したり、Excelに書き出したりして利用する場合には、複数回答は99、未回答は999のように処理した方が、後々の処理がラクになる(・・・と思う)。

    //判定結果を出力(複数回答は99、未回答は999で表示)
    {コメント化ここから
    StrList.Add('        for x in range(len(result)):');
    StrList.Add('            res = np.where(result[x]==True)[0]+1');
    StrList.Add('            if len(res)>1:');
    StrList.Add('                var1.Value = "99"');
    StrList.Add('            elif len(res)==1:');
    StrList.Add('                s = str(res)');
    StrList.Add('                var1.Value = s[1]');
    StrList.Add('            else:');
    StrList.Add('                var1.Value = "999"');
    ここまで}

    //判定結果を出力(複数回答の詳細を表示)
    StrList.Add('        for x in range(len(result)):');
    StrList.Add('            res = np.where(result[x]==True)[0]+1');
    StrList.Add('            if len(res)>1:');
    StrList.Add('                var1.Value = str(res)+ '+'"!複数回答!"');
    StrList.Add('            elif len(res)==1:');
    StrList.Add('                s = str(res)');
    StrList.Add('                var1.Value = s[1]');
    StrList.Add('            else:');
    StrList.Add('                var1.Value = " *未回答*"');

PythonEngineが正しく初期化され、Embeddable Pythonが利用できることが確認できたら、このメッセージは必要ないのでコメント化しておく。

procedure TForm1.FormCreate(Sender: TObject);
var
  //Python39-32へのPath
  AppDataDir:string;
begin
  ・・・
  if DirectoryExists(AppDataDir) then
  begin
    //フォルダが存在したときの処理(コメント化)
    //MessageDlg('Embeddable Pythonが利用可能です。',
    //  mtInformation, [mbOk] , 0);
    PythonEngine1.AutoLoad:=True;

5.さらに進化

さまざまな機能を追加したマークシートリーダー
(ファイルの名称を連番で変更/画像の回転/グリッド指示位置と画像の連動/グリッド指示位置を画像上で矩形選択/閾値等各種パラメータの調整と保存機能/音声読み上げ関連機能の搭載/回答チェック機能(空欄&複数回答対応)/CSV形式でのデータ出力/ExcelBookへのデータ出力/様式の異なるマークシートをテンプレートとして登録して利用可能/抱き合わせ採点の実施機能/共通テスト(数学の様式)に対応等、考えつく限りの機能を搭載/さらに進化します!)

このプログラムでは、「マークシート画像の表示」と、「読み取り処理」の間に何も関連がないが、このプログラムをさらに発展させて、複数枚数の処理を可能にし、読み取り結果を画面上で確認するような機能を追加する際には、マークシート画像の表示はどうしても必要な機能になる。

さらに、画面の左側などに読み込んだマークシートがリスト形式で表示されるようにして、ここから任意のマークシート画像を選んで表示できるような機能も追加するとよいと思う。

読み取り結果も、ここではMemoに表示しているが、CSVやExcelへ出力して利用することを考えると、ここはGridコントロールに変更したい。

Gridコントロール上で選択したデータの該当回答欄に相当する画像が自動的に画面上に表示され、かつ、表示されたマークシート画像上の該当回答欄が矩形で選択され、ユーザーがチェックしやすいGUIにするとなお良いだろう。

また、チェック時にはユーザーがマークシート画像を見ながら確認作業が行えるよう、Gridコントロールの数字をアナウンスしてくれる音声読み上げ機能があると大変便利だ。それから、回答の必要がない、全マークシートが空欄となっている部分は、予め指定することで、チェックから除外できる機能も欲しい。

さらに、スキャナーから読み込んだ画像データを回転させたり、連番で扱いやすい名前に変更したり、様式の異なるマークシートをテンプレートとして登録できるような機能も搭載したい。

より一層ユーザーに優しい、夢に見たようなマークシートリーダーを開発したい。この希望の実現に向けて、日々努力する私でありたい。

Web上に貴重な資料を公開してくださった多くの皆さまに心より深く御礼申し上げます。ほんとうにありがとうございました。

6.著作権表示の記載方法

参考:Python4DelphiのLicenseについて

GitHubのPython4Delphiのダウンロードページには「The project is licensed under the MIT License.」とある。これは「改変・再配布・商用利用・有料販売すべてが自由かつ無料」であること、及び使用するにあたっての必須条件はPython4Delphiの「著作権を表示すること」と「MITライセンスの全文」or 「 MITライセンス全文へのLink」をソフトウェアに記載する、もしくは、別ファイルとして同梱しなさい・・・ということを意味する。

したがってPython4Delphiを利用したプログラムの配布にあたっては、ソフトウェアの中で、次のような著作権表示を行うか、もしくは P4DフォルダのルートにあるLicenseフォルダをプログラムに同梱して配布すればよいことになる。

Python4Delphiを利用した場合の著作権表示の記載例:

Copyright (c) 2018 Dietmar Budelsky, Morgan Martinet, Kiriakos Vlahos
Released under the MIT license
https://opensource.org/licenses/mit-license.php

7.お願いとお断り

このサイトの内容を利用される場合は、自己責任でお願いします。記載した内容を利用した結果、利用者および第三者に損害が発生したとしても、このサイトの管理者は一切責任を負えません。予め、ご了承ください。

【関連記事】

Installing The Splitter & Resizing Height of the VCL Components

「~ 主として「高さ」の変更に関する覚書 ~」

0.準備
1.最も簡単なリサイズ対応(高さの変更)・・・ AlignプロパティとSplitterの利用法
2.さまざまなVCLコンポーネントを追加する
3.画面サイズの変更に追随(主として高さ)
4.まとめ
5.ご案内
6.お願いとお断り

DelphiのVCLコンポーネントTSplitterの使い方と画面のリサイズ対応の覚書Part2。
ここでは、主として「高さ」に関する設定を取り上げる。

0.準備

Delphiを起動して、新規プロジェクトを作成後、任意のフォルダに「プロジェクトに名前を付けて保存」する。※ 同じフォルダにプロジェクトとは別名で、Unitファイルも保存する(Unitが1つしかないプログラムでも、プロジェクトとは別名でUnitファイルを保存する必要がある)。ここではデフォルト設定の名称をそのまま利用する。

・プロジェクトファイル名:Project1.dproj
・ユニットファイル名:Unit1.pas

1.最も簡単なリサイズ対応(高さの変更)・・・ AlignプロパティとSplitterの利用法

FormにPanelを3つドラッグ&ドロップする。もし、 ドラッグ&ドロップ ではなく、PanelをダブルクリックしてFormに置く場合は、操作手順に要注意。パレットのPanelを連続してダブルクリックすると、Formではなく、Panel1の上に次々と新しいPanelが乗っかってしまう。Panel1が出現したら、いったん(Panel2の親となる)Formをクリックして選択してから、パレットのPanelを再度ダブルクリックする。

PanelはStandardに入っている
Formへドラッグ&ドロップする

画面は、次のようになる。

Panel1をクリックして選択したら、次の図のように操作してPanel1のAlignプロパティをalTopに設定する。

画面は次のようになる。

ここでFormをクリックして選択し、Form(親)がアクティブな状態で、このForm(親)に対して、Splitterコンポーネントを(子として)設置する。この「何が親で、何が子なのか」をまず明確にして、かつ、「それぞれの子の状態は、親に対してどうなのか=どんなGUIにするのか」を考えながら作業すると混乱を防げる。

構造をみれば親子関係がわかる

下の図はSplitterを置いたところ。Alignプロパティのデフォルト設定が「alLeft」なのでSplitterはFormの左端に貼りついている。ここで、Splitterを選択したまま、SplitterのAlignプロパティを 「alTop」 に設定すると、Panel1の下に貼り付くように、Splitterの位置が変化して、それと同時に、SplitterのCursorプロパティが上下分割カーソルを意味する「crVSplit」に自動的に変更される。このようにして「親」に対する、「子」の状態を適切に決めて行く。

この状態で SplitterのAlignプロパティを 「alTop」 に設定する
SplitterのAlignプロパティをalTopに設定すると、Cursorプロパティも連動して「crVSplit」に変化する

さらに、実行時のSplitterの動作をわかりやすくするため、SplitterのAutoSnapプロパティをFalseに設定し、MinSizeを「30(デフォルト設定値)」にする。実際の操作としては、SplitterのAutoSnapプロパティをFalseに設定し、下方へスクロールすれば、MinSizeは30になっている(はず)。

AutoSnapプロパティをFalseに設定

次に、Panel3をクリックして選択し、 次の図のように操作してPanel3のAlignプロパティをalBottomに設定する。

画面は次のようになる。

次に、Panel2をクリックして選択し、 次の図のように操作してPanel2のAlignプロパティをalClientに設定する。

Panel2のAlignプロパティをalClientに設定

次にPanel1をクリックして選択し、下のハンドルをドラッグして(Panel1の)高さを少し大きくして下の図のようにする。この状態で上書き保存(Ctrl+S)して実行(F9)し、Splitterが意図した通りに動作することを確かめる。

実行(F9)して、Splitterの動作を確認する

2.さまざまなVCLコンポーネントを追加する

ここで、Panel1~3のCaptionプロパティを「空欄」にして、Panelの名前が表示されないように設定する。さらに、Panel1をクリックして選択し(親にして)、Panel1の上にScrollBoxを載せ、ScrollBoxのAlignプロパティをalClientに設定する。さらに、その上にImageを1つ載せる。ImageのAlignプロパティは「None」のままでよい。

次に、Panel2をクリックして選択し、Memoを1つ載せ、MemoのAlignプロパティをal Clientに設定する。

VCLコンポーネントの配置について慣れないうちは、かなり混乱するが、何が親で、どれが子になって、どういう状況で仕事をさせたいか(このVCLは常に画面の下方に固定で・・・とか、親の残りのスペース全部=alClientで・・・など)を、「よーく考えながら」作業すると、必要なコンポーネントだけでなく、それを設置する順番も見えてくる。

必要な各VCLコンポーネントがパレットのどこにあるのか? もし、場所を忘れてしまっていても、 コンポーネントの名前で検索すれば、検索窓に3~4文字入れた時点で、ほぼ見つかるので、設置したいVCLコンポーネント の機能と名前さえ思い出せれば、そのパレット内の配置に関しては、まったく覚えていなくても、何とかなる。

むしろ、このようなシーンで重要なのは、「実現したい処理にはどんなVCLコンポーネントが最適なのか?」そして「どのコンポーネントを、どう配置すれば、ユーザーに最も使いやすいGUI環境を提供できるのか?」の2点だと思う。

GUI作成に関しては、プログラマ個々のデザインのセンスの良し悪しも当然あると思うが、これに加えて、そのプログラマが「どれだけ修羅場を経験したか・・・」というような、個々のバックグラウンドにある経験も、もしかしたら重要な要素のひとつかもしれない・・・。

VCLコンポーネントの検索例

各VCLコンポーネントの親子関係を「構造」で確認。

VCLコンポーネントの親子関係がよくわかる

いちばん下の階層にあるPanelは、画面では他のコントロールに隠されて見えない。

画面を見ただけでは、各コンポーネントの階層構造はわからない

上書き保存(Ctrl+S)して実行(F9)し、Splitterの動作やFormを最大化した際の各コントロールの見え方等を確認する。

3.画面サイズの変更に追随(主として高さ)

さらに、Formの大きさが変わっても、その時点でのPanel1とFormの高さの比率が維持されるようにプログラミングしてみた。 まず、Private宣言部で整数型の変数2つと、Formが完全に表示された時点で実行される表示終了イベントを取得する手続き procedure CMShowingChanged を宣言。

Formの 表示終了イベントを取得するprocedureの実現部は、以下に記載したコードをミスのないように入力し(文法的に誤りのない状態で)、procedure CMSShowingChanged~行のどこか(付近でも可)にフォーカスがある(=カーソルがある)状態で、Shift+Ctrl+C操作を行うと、手続きが自動的に生成される。

Shift+Ctrl+C:キーボード左側のShiftキーとCtrlキーを左手で同時に押して、さらに右手でCキーを押す

また、宣言の順番も大切。プライベートメンバー変数と手続き(procedure)の宣言の順番が逆になってはいけない。 プライベートメンバー変数の宣言を、手続きの宣言より必ず先に行う必要がある。

  private
    { Private 宣言 }
    //Panel1の幅とFormの高さを記憶する変数
    intPH, intFH:integer;
    //Formの表示終了イベントを取得
    procedure CMShowingChanged(var Msg:TMessage); message CM_SHOWINGCHANGED;
  public
    { Public 宣言 }
  end;

Formの表示終了イベントを取得して、その時点でのPanel1とFormの高さを記憶する。

フォームの表示完了時に処理する(くろねこ研究所さん)

URL:https://www.blackcat.xyz/article.php/ProgramingFAQ_del0049より引用
procedure TForm1.CMShowingChanged(var Msg: TMessage);
begin
  inherited; {通常の CMShowingChagenedをまず実行}
  if Visible then
  begin
    Update; {完全に描画}
    //Formの表示終了時に以下を実行
    Panel1.Height:=intPH;
    intPH:=Panel1.Height;
    intFH:=Form1.Height;
  end;
end;

Formが生成される際に、Panel1とFormの高さをプログラムから指示して決定。

procedure TForm1.FormCreate(Sender: TObject);
begin
  //Panel1とFormの高さを記憶する変数を初期化
  intPH:=200;
  intFH:=480;
end;

Formの大きさの変更イベントに合わせて、Panel1の高さを計算して決定。

procedure TForm1.FormResize(Sender: TObject);
begin
  //比率を維持してPanel1の高さを変更
  Panel1.Height:=Trunc(Form1.Height * intPH/intFH);
end;

ここがいちばん重要か? Splitterが動かされたら(=Movedイベントが発生)、それが動かされた時点(=動かされる直前)でのFormとPanel1の高さを取得。この値をもとにしてFormとPanel1の高さの比率を計算し、さらに、この比率をもとにFormのResize時に Panel1 の高さを計算、その計算結果の小数点以下を切り捨てた整数値を Panel1.Heightプロパティに設定している。※ Heightは整数値で、小数点以下の値にこだわる必要はまったくないから。

procedure TForm1.Splitter1Moved(Sender: TObject);
begin
  //Panel1とFormの高さを取得
  intPH:=Panel1.Height;
  intFH:=Form1.Height;
end;

上書き保存(Ctrl+S)し、実行(F9)して、Panel1の高さを変更し、Formの大きさを最大化して、Formと Panel1の高さの比率が維持されることを確認する。

プログラム起動時の画面
最大化した状態(縦の比率が維持されていることを確認)

4.まとめ

Formに置いたVCLコンポーネントの高さを実行時に調整できるようにするには、Splitterを利用する。手順は以下の通り。

(1)Panelを3つ、Formに設置。上位のPanel1のAlignプロパティを alTop に設定。
(2)Form(親)をクリックして選択後、Splitter(子)を設置。
(3)Panel3のAlignプロパティを alBottomに設定(=Panel3は固定する)。
(4)Panel2の AlignプロパティをalClientに設定。

5.ご案内

今回作成したプログラムを利用して、次回、マークシートリーダー作成の練習プログラムを紹介します。プログラムのGUIはDelphiで今回作成したものをそのまま使い、マークシート読み取りと計算処理は、このBlogでこれまでに紹介してきた PythonForDelphi と Embeddable Python を用いて行います。練習用なので、マークシートの読み取り枚数は1枚で、読み取り結果の表示にはMemoを利用します。

実用化するには、複数シートを読み取れるよう、さらにLoop処理を加えたり、読み取り結果のCSVファイル等への出力も考慮して、結果表示用にMemoではなく、Gridコントロールを用いる等、さらなる工夫が必要ですが、最も重要な「マークシートを読み取る」というプログラムの核心部分を丁寧に紹介します。興味のある方はぜひ、ご覧ください。

6.お願いとお断り

このサイトの内容を利用される場合は、自己責任でお願いします。ここに記載した内容を利用した結果、利用者および第三者に損害が発生したとしても、このサイトの管理者は一切責任を負えません。予め、ご了承ください。

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Installing the Splitter & Resizing Width of the VCL Components

「~ 主として「幅」の変更に関する覚書 ~」

0.準備
1.最も簡単なリサイズ対応(幅の変更)・・・ AlignプロパティとSplitterの利用法
2.最も簡単なリサイズ対応(幅の変更)・・・ Anchorsプロパティの利用法
3.画面サイズの変更に追随(主として幅)
4.まとめ
5.お願いとお断り

DelphiのVCLコンポーネントTSplitterの使い方と画面のリサイズ対応の覚書。

Formの大きさは決め打ちで、決してResizeしない前提でプログラミングできれば、ある意味、それがいちばんラクなんだけど・・・。百歩譲って、Formの大きさはResizeしなくても、Formの中にあるVclコンポーネントの幅・高さは変更できた方がうれしい場合は多い。

例えば、 マークシート画像を読み取って処理する場合、マークシート画像と読み取り結果を比較(チェック)するには、画像と読み取り結果の両方が1つの画面上に表示されていることが望ましい。このような場合に備えて、必要に応じて「画像」と「データ」の表示領域を思いのまま手動で広げたり、狭めたり出来る機能をユーザーに提供したいと考えるのは、全プログラマに共通の思いだろう・・・。

そのような私自身の経験を基に、何に使うかはアイデア次第として、画面の左右や上下にさまざまなVCLコンポーネントが置かれている時、 Splitterを使ってその幅や高さを自由に変える方法をここでは取り上げた。

さらに、Formの大きさの変化に合わせ、Form上に置いた各コンポーネントの大きさ(主として幅)が追随して変化するようなプログラミングにも(自我流で恥ずかしい限りだが)チャレンジしてみた。

主として「幅」の変更に関する覚書

0.準備
1.最も簡単なリサイズ対応(幅の変更)・・・ AlignプロパティとSplitterの利用法
2.最も簡単なリサイズ対応(幅の変更)・・・ Anchorsプロパティの利用法
3.画面サイズの変更に追随(主として幅)
4.まとめ
5.お願いとお断り

0.準備

Delphiを起動して、新規プロジェクトを作成後、任意のフォルダに「プロジェクトに名前を付けて保存」する。※ 同じフォルダにプロジェクトとは別名で、Unitファイルも保存する(Unitが1つしかないプログラムでも、プロジェクトとは別名でUnitファイルを保存する必要がある)。ここではデフォルト設定の名称をそのまま利用する。

・プロジェクトファイル名:Project1.dproj
・ユニットファイル名:Unit1.pas

1.最も簡単なリサイズ対応(幅の変更)・・・ AlignプロパティとSplitterの利用法

最も簡単なリサイズ対応は、Formに置いたPanelなどのAlignプロパティをalNoneからalClientに変更することだ。これでFormの大きさの変更に合わせて(幅・高さ共に)、Form上のPanelの大きさも、親Formの大きさの変更に追随して変わるようになる。
もし、Panel上にButtonを1つだけ置いて使用するのであれば、Buttonの Anchorsプロパティを適切に指定するだけで、画面のリサイズに対応したGUIが完成する。

何に使うかはアイデア次第として、ここではサンプルとして画面の左にMemo、右にPanel(いろいろなコンポーネントを置くベース)がある条件で、Memoの幅を自由に変える方法を取り上げる。さらに、Formの大きさが変わっても、その時点でのMemoとPanelの幅の比率が維持されるような(自我流の)プログラミング例も掲載した。

新規作成したプロジェクトのForm上に、MemoとPanelを1つずつ置く。
MemoもPanelもパレットのStandardにあるので、まずStandardを開く。

>をクリックして開く
MemoとPanelをそれぞれFormへドラッグ&ドロップ
(それぞれをダブルクリックしてもよい)
Form上にMemoとPanelがのる

Memo1をクリックして選択し、下図のように操作してMemoのAlignプロパティをalLeftに設定する。

画面は次のようになる。

重要 ここでFormをクリックして選択する(Formをアクティブにする)。

ハンドル(水色の枠)がMemoからFormに移動し、Formの方がアクティブになる。

Formをアクティブにした状態で、パレットでsplitterを検索する。splitterはAdditionalにあるコントロールで、これを2つのコントロールの間に追加すると、ユーザーが実行時にそのコントロールのサイズを変更できるようになる。

「split」未満の入力で見つかるはず

見つけたらTSplitterをダブルクリックしてFormに配置する。

Memoの右側にSplitterが配置される。
デフォルトでは「幅」の変更用になっている

Cursorプロパティに設定された「crHSplit」は「左右分割カーソル」を意味する。ちなみに、「crVSplit」を指定すると「上下分割カーソル」になる。

最後に、PanelコンポーネントのAlignプロパティを変更する。Panelをクリックして選択し、オブジェクトインスペクタのAlignプロパティを alClient に設定する。

これでMemoの幅の大きさを自由に変更できるはず

Ctrl+Sで上書き保存、F9を押して実行。意図した通りに操作できるか、確認する。

設計時にMemoの幅を適切に指定することで、実行時の初期画面を意図した通りに作成できる。

参考:SplitterのAutoSnapプロパティをFalseすると、幅を小さくしたとき、 Splitterの MinSizeプロパティで設定した値以下に変更されなくなる。これを用いると、MemoやPanelが完全に隠されてしまう事態を予め防止できる。

SplitterのAutoSnapをFalse、MinSizeを30に設定
MemoもPanelも幅がMinSize以下にならない

2.最も簡単なリサイズ対応(幅の変更)・・・ Anchorsプロパティの利用法

では、Panelの上にButtonをのせたら、画面サイズの変更に合わせてButtonの位置はどのように変わるのだろうか?

これを検証してみる。Panel1をクリックして選択し、その上にButtonを1つ設置する。

Panel1が選択されている状態でダブルクリック

設置したButtonの位置を変更する(下図のようにFormの右下隅の方へドラッグして移動)。Buttonのプロパティはデフォルト設定のままにしておく。

この状態で上書き保存(Ctrl+S)し、実行(F9)して、Formの大きさを最大化してみる。

右上の × をクリックして画面を閉じる

Button1の位置を常識的な位置へ自動的に変化させる最も簡単な方法は、「Anchorsプロパティ」の利用である。Button1をクリックして選択し、オブジェクトインスペクタのAnchorsプロパティの設定を次のように変更する。

上書き保存(Ctrl+S)し、実行(F9)して、Formの大きさを最大化して確認する。

右上の × をクリックして画面を閉じる

ちなみに下図のように設定すると・・・

AnchorsプロパティをすべてTrueに設定
もしかしたら、場合によってはアリかも・・・。 右上の × をクリックして画面を閉じる

ちなみに、コレだと・・・

akTopのみFalseに設定
「年越しそば」的な挙動を見せました。ほそーく、ながーく なりました。ある意味これがベスト?

3.画面サイズの変更に追随(主として幅)

さらに、Formの大きさが変わっても、その時点でのMemoとPanelの幅の比率が維持されるようにプログラミングしてみた。 まず、Private宣言部で整数型の変数2つと、Formが完全に表示された時点で実行される表示終了イベントを取得する手続き procedure CMShowingChangedを宣言。

Formの 表示終了イベントを取得するprocedureの実現部は、以下に記載したコードをミスのないように入力し(文法的に誤りのない状態で)、procedure CMSShowingChanged ~行のどこか(付近でも可)にフォーカスがある(=カーソルがある)状態で、Shift+Ctrl+C 操作を行うと、手続きが自動的に生成される。

Shift+Ctrl+C:キーボード左側のShiftキーとCtrlキーを左手で同時に押して、さらに右手でCキーを押す

また、宣言の順番も大切。プライベートメンバー変数と手続き(procedure)の宣言の順番が逆になってはいけない。 プライベートメンバー変数の宣言を、手続きの宣言より必ず先に行う必要がある。

  private
    { Private 宣言 }
    //Memoの幅とFormの幅を記憶する変数
    intMW, intFW:integer;
    //Formの表示終了イベントを取得
    procedure CMShowingChanged(var Msg:TMessage); message CM_SHOWINGCHANGED;
  public
    { Public 宣言 }
  end;

Formの表示終了イベントを取得して、その時点でのMemoとFormの幅を記憶する。

フォームの表示完了時に処理する(くろねこ研究所さん)

URL:https://www.blackcat.xyz/article.php/ProgramingFAQ_del0049より引用
procedure TForm1.CMShowingChanged(var Msg: TMessage);
begin
  inherited; {通常の CMShowingChagenedをまず実行}
  if Visible then
  begin
    Update; {完全に描画}
    //Formの表示終了時に以下を実行
    Memo1.Width:=intMW;
    intMW:=Memo1.Width;
    intFW:=Form1.Width;
  end;
end;

Formが生成される際に、MemoとFormの大きさをプログラムから指示して決定。

procedure TForm1.FormCreate(Sender: TObject);
begin
  //MemoとFormの幅を記憶する変数を初期化
  intMW:=480;
  intFW:=640;
end;

Formの大きさの変更イベントに合わせて、Memoの幅を計算して決定。

procedure TForm1.FormResize(Sender: TObject);
begin
  //比率を維持してMemoの幅を変更
  Memo1.Width:=Trunc(Form1.Width*intMW/intFW);
end;

ここがいちばん重要か? Splitterが動かされたら(=Movedイベントが発生)、それが動かされた時点(=動かされる直前)でのFormとMemoの幅を取得。この値をもとにしてFormとMemoの幅の比率を計算し、さらに、この比率をもとにFormのResize時にMemoの幅を計算、その計算結果の小数点以下を切り捨てた整数値をMemo1.Widthプロパティに設定している。※ Widthは整数値で、小数点以下の値にこだわる必要はまったくないから。

procedure TForm1.Splitter1Moved(Sender: TObject);
begin
  //MemoとFormの幅を取得
  intMW:=Memo1.Width;
  intFW:=Form1.Width;
end;

上書き保存(Ctrl+S)し、実行(F9)して、Memoの幅を変更し、Formの大きさを最大化して、FormとMemoの幅の比率が維持されることを確認する。

Buttonコントロールの幅の違いに注目(上と下の画像は、同じ画像ではありません)

Formの幅は640ピクセル、Memoの幅は480ピクセルで表示
画面を最大化してみた。Formの幅とMemoの幅の比率は保たれているように見える。

数値的にはどうかと思い、FResize前のFormとMemoの幅を表示してみた。

procedure TForm1.FormResize(Sender: TObject);
begin
  //比率を維持してMemoの幅を変更
  Memo1.Width:=Trunc(Form1.Width*intMW/intFW);
  ShowMessage('Memoの幅 / Formの幅:'+IntToStr(intMW)+
    ' / '+IntToStr(intFW));
end;

画面を最大化してから、元の大きさに戻した時のようす。

Formの幅は1382ピクセルと表示されている

参考:私のPCは、画面の解像度を1366×768に設定している(Formが表示される際、Screen.Widthを調査すると1366と表示された)。そこで、FormのWidthを1366に設定すると、ClientWidthはそれより小さくなり、設計時に画面の横幅いっぱいに配置したVCLコンポーネントの右側に実行時余白が生まれる。
FormのClientWidthを1366に設定すると、Widthは1382となり、画面の解像度より大きくなるが、VCLコンポーネントの位置は設計時も実行時も同じになった。
この経験から、画面の解像度はClientWidth×ClientHeightを意味するものと、私は理解しているのだが、これでいいのだろうか?

4.まとめ

Formに置いたVCLコンポーネント(例:Memo)の幅を実行時に調整できるようにするには、Splitterを利用する。手順は以下の通り。

(1)MemoコンポーネントのAlignプロパティを alLeft に設定。
(2)Formを選択後、Splitterを設置。
(3)Panelコンポーネントを置いて、Alignプロパティを alClient に設定。

Panelの上に乗せたButtonなどのコンポーネントは、 Anchorsプロパティを適切に設定することでFormのリサイズに合わせて、その表示位置を変更できる。

5.お願いとお断り

このサイトの内容を利用される場合は、自己責任でお願いします。ここに記載した内容を利用した結果、利用者および第三者に損害が発生したとしても、このサイトの管理者は一切責任を負えません。予め、ご了承ください。

【関連記事】

How to use Python4Delphi

「PythonForDelphiの使い方(Delphiのプログラム内でPythonを動かす)」

1.Delphiで埋め込みPythonを使う
2.準備
3.ノートPCの電池残量を表示するプログラムを作成
4.PythonEngineのメモリリーク
5.Delphi11のIDEが真っ白になってしまう問題への対応方法
6.著作権表示の記載方法
7.お願いとお断り

こちらで紹介した方法の応用版として、自作のマークシートリーダーの読み取り速度をPython4Delphiで高速化。プログラムのダウンロード(無料)も可能です。もし、よかったら次のリンク先記事もご参照ください。

1.Delphiで埋め込みPythonを使う

ノートPCの電池残量を表示する練習プログラムを、埋め込みPythonを使ってDelphiで書いてみる。
埋め込み用途のembeddable pythonをDelphiで使うには? というテーマで悩んでいらっしゃる方の参考になれば、望外の喜びです。なお、以下の内容はDelphiで開発経験のある方を対象としています。IDEの基本的な操作方法等は省略していますので、予めご了承ください。

2.準備

(1)DelphiにPython4Delphi(P4D)のパッケージを予めインストールしておく。

(2)埋め込み用のEmbeddable Pythonをダウンロードし、各種ライブラリをインストール(下記リンク先ではNumpyとOpenCVライブラリをインストール)。

(3)Embeddable PythonにノートPCの電池残量を表示するため、psutilライブラリをインストール( Embeddable Python のダウンロードと設定方法は上の(2)を参照してください)。

「python -m pip install psutil」と入力してEnterキーを押す

(4)Delphiを起動して「ファイル」→「新規作成」→「Windows VCL アプリケーション」の順にクリックして新しいプロジェクトを準備する。

VCLアプリケーションの新規作成(Delphi11の場合)

3.ノートPCの電池残量を表示するプログラムを作成

(1)プロジェクトに名前を付けて保存する
(2)GUIを作成
(3)コンパイル & Python環境をコピー
(4)Python関連のVCLコンポーネントを配置
(5)Python関連のVCLコンポーネントのプロパティを設定
(6)エラー対応(ライブラリパスの確認)
(7)閉じるボタンのコードを書く
(8)FormのCreateでPython39-32の有無を確認する
(9)Messageダイアログを使う
(10)埋め込みPythonと接続する
(11)OnSetDataイベントを利用する
(12)プログラムの完成と動作確認

(1)プロジェクトに名前を付けて保存する

新しいフォルダを作成(名称は任意:ここではBTRC_byP4Dとしている)し、Unit1.pasを保存(Unit1を別名にしてもよいが、名称をメモしておく)。

参考 BTR:Battery(電池) / C:Charging(充電)/ P4D:PythonForDelphi

つづけて、プロジェクトファイル(Project1.dproj)を同じフォルダに保存。
Project1は別名にしてもよいが、上のpasファイルと同じ名称にしないこと。
また、別名にした場合は、名称を忘れないようにメモしておく。

(2)GUIを作成

画面にVCLコンポーネントを配置してGUIを作る。
Memoを2つ(Memo1とMemo2)、
Buttonを2つ(Button1とButton2)が最低限必要。

パレットのTMemoとTButtonをそれぞれ2つずつ、FormへD&Dする。

DelphiのIDEの基本的な操作方法や、VCLコンポーネントの配置方法は、次のリンク先の解説がわかりやすい。

はじめてのDelphiアプリケーション (VCL Form編) (Delphi プログラミング)

URL:https://www.ipentec.com/document/delphi-first-application-vcl-form-application



※ Formの大きさの変更にMemoの大きさやButtonの表示位置を追随させる方法は、別途解説する予定。

各VCLコンポーネントの名称はデフォルト設定のまま

Button1のCaptionプロパティを「実行」に変更。
Button2のCaptionプロパティを「終了」に変更。

Button1のCaptionプロパティを「実行」に変更。 Button2も同様にして「終了」に変更する。
ボタンのCaptionプロパティを変更

(3)コンパイル & Python環境をコピー

ビルド構成(Debug)のまま、ここで1回コンパイルしてexeを生成。

Ctrl+F9(Ctrlキーを押しながらF9キーを押す)でもOK!
コンパイル成功を確認→OKをクリック

※ ツールバーの実行(F9)をクリックして実行した場合は、生成されたexeが実行されてFormが表示されるので、表示されたFormを右上の閉じるボタンをクリックして閉じる。

ツールバーの実行(F9)から実行する場合
右上の「閉じる」ボタンでFormを閉じる

コンパイルに成功すると、BTRC_byP4Dフォルダの中にWin32フォルダが、さらにその下にDebugフォルダがそれぞれ自動的に作成される。このDebugフォルダを開き、別途作成しておいたEnbeddable Pythonの入ったフォルダをコピーして、貼り付ける(下の例では Enbeddable Pythonの入ったフォルダ名をpython39-32としている)。

Enbeddable Pythonの入ったフォルダを
ここへ貼り付ける。
フォルダとファイルの構造はこうなる。

Embeddable Pythonのダウンロードと各種ライブラリのインストール方法は以下のリンク先を参照してください。

(4)Python関連のVCLコンポーネントを配置

DelphiにPythonのスクリプトを埋め込んで実行するには、PythonForDelphiが必要。
PythonForDelphi(またはPython4Delphi さらに略すと P4D)をDelphiにセットアップする方法は以下のリンク先で解説。

(Python4Delphiのパッケージがインストールされた)Delphiのパレットのいちばん下にPython4Delphiの非ビジュアルコンポーネントがあるので、この中から次の3つのコンポーネント

「PythonEngine、PythonGUIInputOutput、PythonDelphiVar」

をForm上にドラッグ&ドロップ(各非ビジュアルコンポーネントをダブルクリックしてもよい)。

※ 非ビジュアルとは、「実行時に見えなくなる」コンポーネントを意味する。

Python4Delphiの非ビジュアルコンポーネント
非ビジュアルコンポーネントなので画面の任意の位置へD&DすればOK!
非ビジュアルコンポーネントは表示しない設定にすることも出来る(忘れっぽい私は常に表示している)。

(5) Python関連のVCLコンポーネントのプロパティを設定

・PythonEngine1のAutoLoadプロパティをFalseに設定

Form上にパレットからPythonEngineコンポーネントをドラッグ&ドロップすると、名称は自動的に PythonEngine1になる。上の図のようにこれをクリックして選択すると、オブジェクトインスペクタにPythonEngine1のプロパティが表示されるので、その中のAutoLoadプロパティをFalseに変更する(デフォルトTrueに設定されているので、チェックボックスのチェックを外す)。

AutoLoadプロパティをFalseに変更

練習ではなく、本格的にプログラミングする際、私はビジュアルコンポーネントについては、その名称を必ず変更するようにしている。理由はButtonコントールなどは使用数が多く、わかりやすい名前を付けておいた方がプログラミングしやすいからだ。

 例:OKボタンなら、そのNameプロパティを button1→btnOK へ変更

しかし、非ビジュアルコンポーネントの場合は、同じコンポーネントを複数配置することは稀なので、Delphiが自動的に割り振った名前をそのまま利用している。ここでもその例にならって、非ビジュアルコンポーネントの名称は Delphiが自動的に割り振った名前をそのまま利用することにする。

・PythonEngine1のDllNameプロパティは、python39.dllを予め指定(組み込み用のPythonのバージョンに合わせて設定する)。

最新版のPython4Delphiでは「python310.dll」がデフォルト値になっていた。

python39.dllは、上でDebugフォルダ内に張り付けたPython39-32フォルダ内にある。

・PythonEngine1のIOプロパティにはPythonGUIInputOutput1を指定する。

IOプロパティのデフォルト設定は「空欄」になっていた。

・PythonGUIInputOutput1のOutPutプロパティに「Memo2」のように出力先を指定したくなるが、ここでは敢えて何も設定しない。

・PythonDelphiVar1のVarNameプロパティは、プログラムコードの記述に合わせるため「var1」とする。※var1と入力後、Enterで確定すること!(青く反転表示されるのを確認する)

「var1」と入力後、Enterキーを押さないと変更が反映されない。

・この状態で実行(F9)した際に「Python Engineが見つかりません」というようなエラーメッセージが表示される場合は、P4Dのパッケージをインストールした際のライブラリパス設定に誤りがないか、確認する

画面下のメッセージ欄の表示:[dcc32 致命的エラー] Unit1.pas(7): F2613 ユニット ‘PythonEngine’ が見つかりません。
コンパイルエラー発生時のUnit1画面

(6)エラー対応(ライブラリパスの確認)

GitHubから入手したPython4DelphiのフォルダのSourceフォルダ以下にある、このプログラムの動作に必要なファイルへのライブラリパスが正しく設定されていることを確認する。設定されていない場合は、(灰色で表示されている誤ったパスを削除して)ライブラリパスを再設定する。

「ツール」→「オプション」の順にクリックして、次の画面を表示する。

「言語」→「Delphi」→「ライブラリ」とクリックして、赤枠囲みの中をクリック。

ライブラリパスを正しく設定する。

PCを新しくした場合等、再設定する必要があるかもしれないので、
設定内容をメモしておく。

ライブラリパスの設定が完了したら、再度コンパイル(実行:F9)してエラーが発生しないことを確認する。

(右上の閉じるボタンで終了)

参考:コンパイルとビルドの違い

・メニューの「プロジェクト」 →「Project1をコンパイル」
 (ショートカットは「Ctrl+F9」)

前回のビルド以降に変更されたファイルと、それに依存するファイルのみをコンパイルして EXE を生成するが、アプリケーションは起動しない。

・メニューの「プロジェクト」 →「Project1をビルド」
 (ショートカットは「Shift+F9」)

変更の有無に関わらず、全てのユニットを再コンパイルして EXE を生成するが、アプリケーションは起動しない。ユニット数が多ければ当然それだけ遅くなる。

・実行(ショートカットはF9)

変更されたソースコードをすべてコンパイルする。コンパイルが成功した場合は、アプリケーションを実行するので、そのアプリケーションを IDE でテストできるようになる。

・デバッガを使わずに実行。(ショートカットは「Shift+Ctrl+F9」)

変更があったユニットだけをコンパイルしてexeを生成し、 アプリケーションを起動する(exe単体での起動と同じ)。

(7)閉じるボタンのコードを書く

Formの「終了」ボタンをダブルクリックすると画面は次のようになる。ここに終了ボタン(Button2)がクリックされた時のProcedure(手続き)を記述する。

procedure TForm1.Button2Click(Sender: TObject);
begin

end;

beginとend;の間に次のように記入する。

procedure TForm1.Button2Click(Sender: TObject);
begin
  //プログラムの終了
  Close;
end;

//は1行をコメント化(コンパイラはコメント部分を無視する)

Closeは、Formを閉じる命令(正確にはメソッドだから方法?)。アプリケーションのメインフォームを閉じると、そのアプリケーションは終了する。
(ここはApplication.TerminateでもOKだが、 Windowsでは、Application.Terminate でアプリケーションを強制終了させた場合には、OnCloseQueryイベントが実行されない仕様になっているとのこと)。← これは不具合ではなく、Windowsの仕様。

もし、アプリケーション終了時(Windowsの終了やログアウト時も含む)に、何らかの終了処理(中止を含む)を行いたい場合は、OnCloseQueryイベントが実行されるCloseを使用する。(今回は行わないがForm生成時に、例えばTStringListをCreateしてプログラム内で利用するような場合には、CreateしてTry文で使用(~Finally ここで解放 End;)の一般的流れが使えないので、 OnCloseQueryイベントもしくはOnDestroyイベントで、TStringList.Freeのようにして確実に解放しなければならない。)

実行(F9)してFormが表示されたら、「終了」ボタンでアプリケーションを終了できることを確認する。

(8)FormのCreateでPython39-32の有無を確認する

FormがCreateされる時に、Embeddable Python(Python39-32 フォルダ)があることを確認し、必要な諸設定を行う。F12を押すとFormとUnitの表示を交互に切り替えることができる。画面をFormに切り替え、アクティブ(Formのどこかをシングルクリック)にし、オブジェクトインスペクタのイベントタブをクリックして、下にスクロールさせ、OnCreateイベントの右の空白部分をダブルクリックする。自動的にUnit画面に表示が切り替わり、下のようにForm.Create手続き部が生成される。

procedure TForm1.FormCreate(Sender: TObject);
begin

end;

Python39-32フォルダのパスを入れる変数を宣言する。procedureとbeginの間にvar(宣言)を入力して、改行&字下げを行い、文字列型変数AppDataDirを宣言する。必要であればコメントで変数の用途を書いておく。

procedure TForm1.FormCreate(Sender: TObject);
var
  //Python39-32へのPath
  AppDataDir:string;
begin

end;

次に、beginとend;の間にForm.Create手続きで行いたい内容を記述する。

begin

  //Embeddable Pythonの存在の有無を調査
  AppDataDir:=ExtractFilePath(Application.ExeName)+'Python39-32';

  if DirectoryExists(AppDataDir) then
  begin
    //フォルダが存在したときの処理
    MessageDlg('Embeddable Pythonが利用可能です。',
      mtInformation, [mbOk] , 0);
    PythonEngine1.AutoLoad:=True;
    PythonEngine1.IO:=PythonGUIInputOutput1;
    PythonEngine1.DllPath:=AppDataDir;
    PythonEngine1.SetPythonHome(PythonEngine1.DllPath);
    PythonEngine1.LoadDll;
    //PythonDelphiVar1のOnSeDataイベントを利用する
    PythonDelphiVar1.Engine:=PythonEngine1;
    PythonDelphiVar1.VarName:=AnsiString('var1');  //プロパティで直接指定済み
    //初期化
    PythonEngine1.Py_Initialize;
  end else begin
    MessageDlg('Embeddable Pythonが見つかりません!',
      mtInformation, [mbOk] , 0);
    PythonEngine1.AutoLoad:=False;
  end;

end;

Ctrl+Sでコードを上書き保存。保存したら実行(F9)。
ここまでの操作にミスがなければ次のメッセージが表示される。

「OK」をクリックして閉じる

続けてFormが表示されるので、終了ボタンをクリックして閉じる。
画面下のメッセージ欄に次のヒントが表示されることを確認する。

(9) Messageダイアログを使う

[dcc32 ヒント] Unit1.pas(118): H2443 インライン関数 ‘MessageDlg’ はユニット ‘System.UITypes’ が USES リストで指定されていないため展開されません

ヒントの言う通り、 ‘System.UITypes’ を USES リストで指定する。以下のように、30行目付近の implementation (実装・実現部)宣言と、その下の コンパイラ指令 {$R *.dfm}の間が空白行になっているので、ここに「uses」と「 System.UITypes ;」を記述。なお、System.UITypes の後ろには行末を意味するセミコロン;を半角で入力する。

implementation

{$R *.dfm}

implementation の下に「uses」と入力してEnter & 字下げ(TABキー)、
で、次の行に「System.UITypes;」を記述。

implementation

uses
  System.UITypes;  // <-入力する

{$R *.dfm}

{$R *.dfm} はコメントではなく、dfmファイルを見つけて 実行ファイルにリンクさせるコンパイラ指令(命令)。「不要なコメントである」と勘違いして、消してはいけない。

以上が入力した状態。上書き保存(Ctrl+S)して、実行(F9)。メッセージにヒントが表示されないことを確認。 表示されたらメッセージ欄を確認。確認後、Formを閉じる。

警告もヒントも表示されない

(10) 埋め込みPythonと接続する

次に、いよいよ埋め込みPythonと接続する。Unitが表示されている場合はF12キーを押してFormの画面に切り替え、左下の「実行」ボタンをダブルクリックする。表示は自動的に以下のように、Button1Click手続きに切り替わる。

procedure TForm1.Button1Click(Sender: TObject);
begin

end;

初めにPythonのスクリプトを入れる文字列型リストと、Pythonから送られたデータを保存する文字列型リストをローカル変数として、以下のように宣言する。

procedure TForm1.Button1Click(Sender: TObject);
var
  //PythonのScriptを入れる
  strScrList:TStringList;
  //Pythonから送られたデータを保存する
  strAnsList:TStringList;
begin

end;

最初に、Memo1を初期化し、データの入れ物をそれぞれ準備する。

begin

  //初期化
  Memo1.Clear;

  //Scriptを入れるStringList
  strScrList:=TStringList.Create;
  //結果を保存するStringList
  strAnsList:=TStringList.Create;

end;

準備したStringListが処理の最後にきちんと解放されるよう、try文を用いて処理する。
tryと入力してEnterキーを押すと、次の画面のようにfinallyとend;が自動入力される。

begin

  //初期化
  Memo1.Clear;

  //Scriptを入れるStringList
  strScrList:=TStringList.Create;
  //結果を保存するStringList
  strAnsList:=TStringList.Create;

  try

  finally

  end;

end;

StringListの解放処理を先に書いてしまう。これで万一、トラブルが発生しても必ずStringListは処理の最後に解放(メモリが空く)される。

  //Scriptを入れるStringList
  strScrList:=TStringList.Create;
  //結果を保存するStringList
  strAnsList:=TStringList.Create;

  try

  finally
    //StringListの解放
    strAnsList.Free;
    strScrList.Free;
  end;

最後に、バッテリー残量を取得するPython Scriptを文字列型リストへ、1行ずつ書き込んで、Memo1に表示、Python側でMemo1に表示されたスクリプトを実行し、返ってきた結果を文字列型リストに読み込んで、Memo2に表示するコードを記述する。

  try
    //バッテリー残量を取得するPython Script
    strScrList.Add('import psutil');
    //バッテリー残量
    strScrList.Add('btr = psutil.sensors_battery()');
    //バッテリー残量を表示
    strScrList.Add('var1.Value = str("残量:") 
      + str(btr.percent) + str("%")');
    //Scriptを表示
    Memo1.Lines.Assign(strScrList);
    //Execute
    PythonEngine1.ExecStrings(Memo1.Lines);
    //結果を表示
    Memo2.Lines.Assign(strAnsList);
  finally
    //StringListの解放
    strAnsList.Free;
    strScrList.Free;
  end;

入力したら上書き保存(Ctrl+S)して、実行(F9)する。Formが表示されたら、Form上の「実行」ボタンをクリックする。結果は次のようになる。

Memo1には、意図した通り、StringListに入れたPythonのScritが表示されているが、
Memo2は空欄のままである。

Object Pascalのコードをよく読むとPythonEngineをExecuteしてPythonに電池残量を計算させるところまではOKだが、Pythonが計算した結果を「Delphi側が受け取れていない」ことがわかる。

    //Execute
    PythonEngine1.ExecStrings(Memo1.Lines);

    { ここでPythonからの結果通知を受け取る必要がある }

    //結果を表示
    Memo2.Lines.Assign(strAnsList);

(11) OnSetDataイベントを利用する

では、Pythonからの結果通知を受け取るにはどうしたらいいかというと、残念ながらその処理はこのprocedure内には書けない。

結論から言うと、Pythonの返した結果は、Formに配置したPythonDelphiVar1コンポーネントのOnSetDataイベントで受け取ることができる。その処理を実現するため、プログラムに必要な変更を加える。

まず、実行ボタンがクリックされた時の手続きの冒頭で、「結果を保存するStringList」として「strAnsList」というローカル変数を宣言したが、今、結果は「PythonDelphiVar1のOnSetDataイベントで受け取る」ことにした=つまり「別の手続きの中で受け取る」ことになるから、この変数をプログラムのあちこちから使える(見える)プライベートメンバー変数(クラス内部でのみ利用可能な変数) に変更することにする。以下、その処理を示す。

まず、 Button1Click手続きでローカル変数として宣言したstrAnsList変数をコメント化する。

procedure TForm1.Button1Click(Sender: TObject);
var
  //PythonのScriptを入れる
  strScrList:TStringList;
  //Pythonから送られたデータを保存する
  //strAnsList:TStringList;  //コメント化してしまう
begin

22行目付近のprivate部に、このクラス内部でのみ利用可能な プライベートメンバー変数として、strAnsList変数を再宣言する。

  private
    { Private 宣言 }
    //Pythonから送られたデータを保存する
    strAnsList:TStringList;
  public
    { Public 宣言 }
  end;

これでstrAnsList変数は、プライベートメンバー(クラス内部でのみ利用)化され、異なる手続きの中でアクセスできるようになった。

続けて、PythonDelphiVar1のOnSetDataイベントの処理を実装する。F12を押して画面をFormの方に切り替えて、PythonDelphiVar1をクリックして選択する。

選択する

画面左下のオブジェクトインスペクタにPythonDelphiVar1が表示されていることを確認して、イベントタブをクリックし、下にスクロールしてOnSetDataイベント部分の右の空白をダブルクリックする。

OnSetDataの右の空白をダブルクリック

PythonDelphiVar1SetData手続きが自動的に生成されるので、次のコードを記述する。

procedure TForm1.PythonDelphiVar1SetData(Sender: TObject; Data: Variant);
begin
  //値がセットされたら文字列リストに値を追加
  strAnsList.Add(Data);
  Application.ProcessMessages;
end;

これでPython側からDelphi側へ、計算結果を渡せるようになった。ここでは単純な処理しかしていないので実質不要であるが、例えばループ処理を行って何度も結果が返るなど、より複雑な計算処理をPython側で行わせる場合に、確実に結果を受け取れるよう、 Application.ProcessMessagesを「おまじない」として入れてある。

Application.ProcessMessages メソッドは、「Windows がイベントに応答できるようアプリケーションの実行を一時的に停止」する命令であるとのこと。このメソッドについては下記リンク先の説明が詳しい。

Article: 待ち関数の必要性

URL:http://gumina.sakura.ne.jp/CREATION/OLD/COLUMN/CD1MATI.htm

(12)プログラムの完成と動作確認

これで、最低限の機能だけは組み込んだノートPCの電池の残容量を表示するプログラムの完成である。上書き保存(Ctrl+S)して、実行(F9)し、結果を確認する。

電池の残量が表示された

4. PythonEngineのメモリリーク

参考 PythonEngineのメモリリークが起きた時は・・・

別のプログラムでPythonEngineがメモリリークを起こしたことがある。この問題について、次のようにFormのOnDestroyイベントでFinalize処理を行うよう対応したところ、メモリリークは解消された。備忘録として記しておく。

procedure TFormZZZ.FormDestroy(Sender: TObject);
begin
  //これでメモリーリークは発生しなくなった
  //PythonDLLによって割り当てられたすべてのメモリが解放される
  //旧バージョンのPythonEngineの場合
  //PythonEngine1.Finalize;
  //最新バージョン(2021年12月現在)のPythonEngineの場合
  PythonEngine1.Py_Finalize;
  PythonDelphiVar1.Finalize;
end;

5. Delphi11のIDEが真っ白になってしまう問題への対応方法

参考リンク Delphi11のIDEが真っ白になってしまう問題への対応方法

RAD Studio 11のプロジェクトファイル(.dproj、.cbproj)をダブルクリックしてIDEを起動し、デバッグ実行すると、IDEの各ウィンドウが白く表示される

URL:上のLinkをクリックしてください。

6.著作権表示の記載方法

参考:Python4DelphiのLicenseについて

GitHubのPython4Delphiのダウンロードページには「The project is licensed under the MIT License.」とある。これは「改変・再配布・商用利用・有料販売すべてが自由かつ無料」であること、及び使用するにあたっての必須条件はPython4Delphiの「著作権を表示すること」と「MITライセンスの全文」or 「 MITライセンス全文へのLink」をソフトウェアに記載する、もしくは、別ファイルとして同梱しなさい・・・ということを意味する。

したがってPython4Delphiを利用したプログラムの配布にあたっては、ソフトウェアの中で、次のような著作権表示を行うか、もしくは P4DフォルダのルートにあるLicenseフォルダをプログラムに同梱して配布すればよいことになる。

Python4Delphiを利用した場合の著作権表示の記載例:

Copyright (c) 2018 Dietmar Budelsky, Morgan Martinet, Kiriakos Vlahos
Released under the MIT license
https://opensource.org/licenses/mit-license.php

7.お願いとお断り

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【関連記事】

Download Embeddable Python and Install the library

「埋め込み用Pythonのダウンロードとライブラリのインストール方法」

1.始めに
2.Embeddable Python をダウンロード
3.必要なライブラリをインストールする準備
4.Numpyのインストール
5.OpenCVのインストール
6.単体で動作確認(検証)
7.まとめ
8.お願いとお断り

1.始めに

なぜ、Embeddable(埋め込み用)なのかというと、内部的なデータ処理にPythonのOpenCV & Numpyライブラリを使うと、アプリケーションをより一層高速化できることがわかったから。
それから、Python環境のアップデートとは関係なく、安定動作する実行環境を、PCの操作にあまり詳しくないユーザーに提供できるから。

重要

このような特殊な目的ではなく、学習用にPythonを導入したい場合は、埋め込み用途に配布されている Embeddable Python はお勧めできません! 普通にインストーラを使用して、普通のPython環境をPCにセットアップしてください。

もし、PC環境を変更せずに、(持ち運びも可能な)Pythonが実行できる環境を作りたい場合は、WinPythonが便利! WinPythonならUSBメモリやSDカードにセットアップして、PC環境に変更を加えずに利用可能。なお、この場合は・・・

スタートボタン → 設定 → アプリ → アプリと機能 → その他の設定 → アプリ実行エイリアス → アプリ インストーラー(項目のいちばん下)のPythonとPython3をオフ

・・・にしてから、外部メディアにセットアップしたWinPythonを実行。

WinPythonのDL先URL:https://winpython.github.io/

WinPythonを外部メディアに入れて利用する場合

2.Embeddable Python をダウンロード

Embeddable Python は https://www.python.org/downloads/windows/ からダウンロード可能。

上記のサイトに行くと、古い2.X.Xから最新版の3.11.0(テスト用)まで、これまでにリリースされた Embeddable Python すべてがある。どれを選んでよいか、困ってしまう(実際、困った)。だから、使用目的(& 条件)に合わせてダウンロードする Embeddable Python を選択しなければならない。

私の場合、まず Stable Release (安定動作版:様々な動作検証がそれなりに行われたバージョンってこと?)であること。さらに、数値演算用のNumpyライブラリと、コンピュータの眼として利用する画像処理用のOpenCVがインストールできること。最低限、この3つを満たしていればOK!だ。

それから、32 or 64bitバージョンのどちらを選択するか、ちょっと迷ったが、よく考えたら(私が)、Delphi11で設定しているVCLのターゲットプラットフォームは32bitアプリケーション。だから32bitバージョンを選択すべきだと気付く。

ターゲットプラットフォームの設定はWindows32ビット(私の場合)

あとは・・・新しいのか、ちょっと前のか、すごく古いのか、どれを選べばいいんだろー??? 2.X.Xはもう既にサポートがないから、3.X.X なのは絶対だけど。。。3.6.X? 3.7.X? 3.8.X? それとも3.9.X? 最新版は3.10.1があるけどー。

うー。うーー。うーーー。(悩む私)

※ 実はマイナーバージョンごとの違いすらまったくわかってない。

たぶん(根拠無し)、最新版でいいだろー☆(←完全な思い込み)

単純極まりない私は、Stable Release のいちばん上にある

「Win7より前のOSには使えません」・・・って注意書きしかないし、この時点での私はNumpyが3.10.1に非対応(2021年12月現在)だということを、誰も教えてくれないから当然知らない(調べろ!)し、なにより、普通の人(?)は、最新版が取り敢えず良さそうに思えちゃうものじゃないですか。

3.10.1のダウンロード&解凍作業完了! 続いてライブラリのインストール。

コマンドプロンプトを開いて・・・。解凍先フォルダへ行って・・・。ラッタッタッタ。

python -m pip install numpy で、ポチ!

ERROR: Could not build wheels for numpy, which is required to install pyproject.toml-based projects

・・・と、表示され、あっけなく阻止される。なんでー

エラーメッセージの内容をよく読んでみると・・・

setup.py:63: RuntimeWarning: NumPy 1.21.5 may not yet support Python 3.10.

確かに。たいへんよくわかりました。はい。

インストールするライブラリが、どのPythonのマイナーバージョンに対応しているか? なんて、対応状況をあらかじめ調査するなんてこと、まずやるわけない私のようなド素人が(無茶を承知で) Python3.10.1 にNumpyライブラリを強制インストールする凶行に及んでも、ちゃんと阻止してくれるんですね。

できればこういう大事なことは、N○Kの朝と晩の7時の全国放送で毎日しつこくアナウンスするとか、誰もがTopページにしているであろう某サイトのいちばん見やすい場所に広告として日々表示してほしい☆・・・と夜空の星に願いつつ、

「使いたいライブラリがどのバージョンに対応しているか、ダウンロード前にきちんと調べる」という貴重な教訓を得て、ここで初めて検索キーワード「numpy python 対応バージョン」でGoogle先生にお伺いをたてると、以下の情報がヒット!

Python向け科学計算パッケージNumPyの開発チームは、最新版となる「NumPy 1.20.0」を1月30日(現地時間)にリリースした。
「NumPy 1.20.0」はこれまでで最大となるアップデートで、Python 3.7~3.9をサポートし、Python 3.6のサポートは終了している。

1月30日とあるのは2021年のこと。この記事は https://codezine.jp/article/detail/13574 より引用

わかった☆OK これでバージョン3.10.1は除外。とりあえず3.9.Xのどれかにしよう。

もうひとつ、どうしても入れたいのがコンピュータの眼「OpenCV」ライブラリ。そこで、PythonとNumpyとOpenCVの関係について調べてみると・・・

opencv-python 4.5.1.48が最新です。
pythonのバージョンは3.6以上とされていますが、numpyについては特に指定はありません。
pipのバージョンは19.3以上

teratailのPythonに関する質問(https://teratail.com/questions/323063)より引用

わかった☆OK これを近所の3歳児でもわかるように言い換えてみよう。

OpenCVとNumpyは仲がイイ。

ダウンロードするPythonのバージョンは、この情報をもとに 3.9.X の中でいちばん新しい 3.9.9 に決定。

理由は次の通り。

Pythonのバージョンを意味する番号は前から順に、メジャー.マイナー.マイクロのそれぞれを意味するそうで、Pythonのメジャーバージョンは2or3。サポート状況から、これは当然「3」を選択。マイナーバージョンは、これもやはりサポート期限を考えるといちばん長いのは3.9.Xで「2025年10月」までだから、これを根拠に「3.9.X」に決定。で、さらにマイクロバージョンは「バグ修正リリース」に相当し、マイクロバージョン間については、互換性が保証されるとのこと。ならば最もバグが消えているのは「3.9.9」なのかなー。みたいな・・・

Pythonのバージョンによる違いについては、次のサイトの解説が詳しい。

Pythonの複数バージョンの扱い方(Windowsの場合)

URL:https://gammasoft.jp/python/python-version-management/

あらためて気合を入れなおし Embeddable Python3.9.9 のダウンロードを持てる全力を挙げて決行!

(正直 ポチ!するだけだけど)

控えめに言えば、Python3.9.9-32bitのEmbeddable Packageを選択してダウンロード。

3.必要なライブラリをインストールする準備

ダウンロードした Package を任意のフォルダに解凍し、ライブラリのインストールに pip が使えるよう、設定を変更( pythonNN._pthファイルを修正 )する。

デスクトップに新しいフォルダーを作成して、そこにDLしたPackageを保存(Zipファイルの大きさはたったの7.3MB!)。

これを解凍すると、

python-3.9.9-embed-win32ができる(大きさは14.0MBとかなり小さい)

python-3.9.9-embed-win32 フォルダを開き、pythonNN._pthファイルを見つけて修正を加える(NNはPythonのバージョンを示す数字)。その方法は下記の通り。

→ バージョン3.9.9をダウンロードしたから、修正するファイルは python39._pth。見つけたらテキストエディタで開いて、いちばん下の行・・・

このナンバーを削除する→ # import site

を、

import site

と コメント解除 する。(※ 正確には、削除するのは#とその後ろの半角スペース)

【補足】
3.9.10では「#import site」となっており、ナンバー#の後ろには「半角スペースがありません」でした!(20220822追記)

コメント解除したら、上書き保存(Ctrl+S)する。

※ 以前、こんな場面で「上書き保存」ではなく「名前を付けて保存」し、あろうことか、ファイル名が「例:XXXXX._pth.txt」になってしまったコトが・・・

次に、ライブラリのインストールに必要な pip を実行するためのScriptファイル get-pip.py を入手する。get-pip.py は次のリンクからダウンロードできる。ちなみにダウンロードした get-pip.py をテキストエディタで開いたら、内容が知らない言語(もしかして、コレが宇宙語?)で書かれており、驚愕。びっくり。もうあけない。

get-pip.py の入手先はこちら(https://bootstrap.pypa.io/get-pip.py

で、ダウンロードした get-pip.py を python-3.9.9-embed-win32 フォルダへコピー。これで get-pip.py が使えるので、次に説明する方法で、まずpipをインストール。

ここからはコマンドプロンプトで作業する(PowerShellでは、モジュールエラーとなり、実行出来ないようだ:情報のみ、未検証です)。

スタートボタンを右クリック→ファイル名を指定して実行→「cmd」と入力して「OK」をクリック→コマンドプロンプトが起動→「cd」+半角スペースを入力→エクスプローラーから「 python-3.9.9-embed-win32 フォルダ」をドラッグ&ドロップしてEnterキーを押す。

で、画面に表示されている > の後ろに「python get-pip.py」と入力してEnterキーを押す(下図赤のアンダーライン部分)。正しく操作が行われていれば、下の画面のようにpipのダウンロードとインストールが自動的に行われる。

pipをインストール(この時点でフォルダ全体の大きさは29.7MB)

Consider adding this directory to PATH(このディレクトリをPATHに追加することを検討してください)と警告されるが、これは気にしない。Embeddable Python を使う目的そのものが、PATHなんかどこにも通さずに

「好き勝手にPythonを使う」

ことだから。

参考:もし、ここで「’python’ は、内部コマンドまたは外部コマンド、操作可能なプログラムまたはバッチ ファイルとして認識されていません。」というエラーが出る場合は、コマンドプロンプトの現在位置(カレントディレクトリ)をよく確認すること。Python.exeがある(見える)フォルダじゃないと、>python ~ コマンドは使えない。

pipがきちんとインストールされたことを、ここで確認しておく。

python -m pip list と入力してEnter

問題がなければ、インストールされたpip他のバージョンが表示される。
「python -m pip list」で「python.exe: No module named pip」が返る場合は、 pythonNN._pthファイルの修正(# import siteの前にある記号#(ナンバー)とその後ろの半角スペースを削除して import site だけにするコメント化の解除手続き)が正しく行われていない可能性が高い。
また、複数のライブラリのインストールを行うと、 pythonNN._pthファイル が修正前の状態に戻されてしまうこともあるようだ。要確認。

4.Numpyのインストール

続いて「愛しのNumpy」をインストール。

>python -m pip install numpy と入力してEnter!

「生きていてよかった」と思える至福の一瞬がここに。

警告:Consider adding this directory to PATH (このディレクトリをPATHに追加することを検討してください) は、まったく気にしない。Numpyが入ればいいのだ。わはは*(^_^)*♪

5.OpenCVのインストール

さらに、視力0.01かつ老眼&緑内障の恐れありと診断(2万ン千円も払ったのにイタいことばかり言いやがって:チ○ショー!「我が愛と哀しみの人間ドック2021年の記録」より抜粋)された私の眼に代わるSecret Weapon、目にも止まらぬ 走召 高速!でマークシートを読んでくれる機械の眼という意味がほぼない長い前置きを乗り越え、今、怒涛のクライマックス。「OpenCV」ライブラリがいよいよ My PC へ!

サぁイレント ナァイ~ ホぉリィ ナァイ~(さらに意味なし)

>python -m pip install opencv-python と入力してEnter!

注意:「opencv」に続けて「-python」が必要。

念願のOpenCVのインストールについに成功した・・・その日、彼は狂喜乱舞して泣き崩れたという。彼の日記の末尾には「OpenCVよ。永遠なれー」の文字が。

ちなみに、この時点で「Numpy」と「OpenCV」を入れた「python-3.9.9-embed-win32」フォルダの内容は152MB!と他を圧する勢いで巨大化していた。最初は15MB程度しかなかったのに10倍に膨れ上がっている・・・。

なんということか。すでに語るべき言葉を私は持たない。大きな広い美しい心で、この変化をありのままに・・・、そうだ、謙虚に受け止めよう。さぁ深呼吸だ。おぉ空気がうまい。生きてるってことは素晴らしい。

そう言えば、私が書いたDelphiのプログラムをことごとく「ウイルス扱い」して「隔離」しやがる某有名ウイルス対策ソフトも、今日は静かにしてるじゃないか。人間、すべからく、受容することが肝心だ。別にPCの重さがいつの間にか10倍になって、持ち運び困難になったわけではないのだから。

6.単体で動作確認(検証)

作成したEmbeddable Pythonのフォルダ「python-3.9.9-embed-win32」は名前が長く、ちょっと扱いにくいので、フォルダ名をもう少し短く、わかりやすい名前に変更してから、動作検証を行う。

変更前: python-3.9.9-embed-win32 → 変更後:python39-32

フォルダ名の意味:前から順に「Pythonが入っているフォルダで、そのメジャーバージョンは「3」、マイナーバージョンは「9」で、ターゲットプラットフォームは32ビット版だよ」と、全世界のユーザーにやさしくPR(どこかのサイトでこの表記法を見て感動!)。

【動作検証の準備】

上で作成した「python39-32」フォルダと同じ階層に、新しく「psf」という名前のフォルダを作成する。ここにテスト用のScriptファイルや画像データを保存する。

【説明】psf:「P」ythonの「S」criptが入っている「F」older ・・・ という意味。

データ保存用の psf フォルダを作成

【動作検証用の環境変数設定バッチファイルを作成】

最終的にはDelphiから操作する予定のEmbeddable Pythonだが、ここでは動作検証用のバッチファイルを作成し、これを起動してテスト用のScriptを走らせる。

最初に環境変数をセットするバッチファイルを作成する(バッチファイルの作成に関しては、下記参考リンク先:「Windowsでpythonを使う/配布する時に便利!Python embeddable package使い方」に大変詳しい解説があります。作成した方に心から感謝 m(__)m )。

以下の3行をテキストエディタに入力(コピペ)し、文字コードはUTF-8を指定して「setmyenv.bat」という名前を付けて、上の図の「新しいフォルダー」に保存する。

SET DP0=%~dp0
SET PATH=%DP0%\python39-32;%PATH%
SET PYTHON_PATH=%PYTHON_PATH%;%PYTHON_PATH%\Scripts

1行目で、バッチファイルのあるフォルダをカレントディレクトリに指定
2行目で、PATHにEmbeddable Pythonを入れたフォルダへのパスを設定
3行目で、Python.exeとpip.exeへのパスを設定

【動作検証用のスクリプト実行バッチファイルを作成】

続いてScriptを実行するためのバッチファイルを作成する。 以下の5行をテキストエディタに入力(コピペ)し、文字コードはUTF-8を指定して「python_script.bat」という名前を付けて「新しいフォルダー」に保存する。

@echo off
cd /D %~dp0
call setmyenv.bat
cd psf
cmd

1行目は、コマンドプロンプトの画面表示を抑制して見やすくする
2行目は、 バッチファイルのあるフォルダをカレントディレクトリに指定
3行目は、環境変数設定用バッチファイルを内部的に呼び出して実行
4行目で、画面に表示するディレクトリへ移動
5行目は、コマンドプロンプトを表示する

フォルダとファイル構成

【検証用スクリプトを作成】

Embeddable PythonにインストールしたNumpyとOpenCVをインポートして動作する検証用のScriptを作成する。 以下の内容をテキストエディタに入力(コピペ)し、文字コードはUTF-8を指定して「test.py」という名前を付けて「psf」フォルダーに保存する。

import numpy as np
import cv2

img = cv2.imread("test.jpg")
print(type(img))   # Numpy配列に画像データが読み込まれたことを確認
print(img.shape)   # OpenCVが読んだ画像情報(縦横画素数他)を表示

【検証用画像を用意】

任意のJpeg形式の画像を「test.jpg」という名前で「psf」フォルダーに用意する。画像ファイル名に日本語は使えないことに注意する(OpenCVの読み書きコマンドは日本語に対応していないため、日本語が混じっているとエラーになる)。この問題への対応方法は下記参考リンクをご参照ください。

psf フォルダの内容

【検証】

(1)「python_script.bat」 をダブルクリックしてコマンドプロンプトを起動。

コマンドプロンプトを起動したところ

(2)赤で示した下線部に「python test.py」と入力してEnterキーを押す。

黄色の枠内に結果より正しく動作したことがわかる。
<class ‘numpy.ndarray’>:データ形式はNumpyの配列、
(284, 283, 3)は、縦・横の画素数とチャンネル数を示す。

【参考URL】

Windowsでpythonを使う/配布する時に便利!Python embeddable package使い方

URL:https://hituji-ws.com/code/python/python-emb-usage/

Python OpenCV の cv2.imread 及び cv2.imwrite で日本語を含むファイルパスを取り扱う際の問題への対処について

URL:https://qiita.com/SKYS/items/cbde3775e2143cad7455

WindowsでPython3.7の実行環境を手早く作る方法

URL:https://qiita.com/hirohiro77/items/377dfc0a264acb3db222

7.まとめ

(1)使用目的や使用条件、必要なライブラリのインストール上の制約(どのバージョンのPythonに対応しているか)、何bitのアプリケーションに埋め込むのか等、事前に必要事項を十分調査した上でダウンロードするEmbeddable Pythonのバージョンを決める。

(2)ライブラリのインストールは必ず「Python -m」を付ける。→ 付けないとモジュール参照パスの指定等に問題が発生(構成を壊してしまうとの情報あり:参考リンク「WindowsでPython3.7の実行環境を手早く作る方法」を参照)するようだ。

Python -m pip install (ライブラリ名)

(3)必要なライブラリをインストール後、実際にそれらをimportして動くPython Script をEmbeddable Pythonで動かし、確実に動作することを確認する。Delphiに埋め込んでから余計なトラブルに悩まされないよう、ここで必ず単体で動作することを確かめておく。

8.お願いとお断り

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【関連記事】

Delphi & Embeddable Python

「なぜ Delphi & Embeddable Python なのか?」

自分ひとりで使うにはPythonはとても便利だ。カプセル化してある高機能なライブラリのおかげで、わずか数行Scriptを書くだけで、とんでもない処理が誰にでも簡単に実現できる。

必要な大抵の処理は、自分で書かなくても、どこかの優秀な方が作ったサンプルが、Web上のあちこちで公開されているから、ほとんどすべてそれで間に合ってしまう。だから、Pythonに関する限り、自分で書くというよりは、誰かが書いたものを探している時間の方が多い・・・というのは、私だけではないだろう。

それらを写経して、切ったり、貼ったりして業務をこなす。便利であること、この上ない。ラクをしたその分だけ、プログラミングする楽しさや喜びが失われたような、そんな気がすることもあるが・・・。

ただ、他人様に使っていただくモノについては、これが当てはまらない。

「マニュアルを読まなければ使えないようなプログラムは、ダメなプログラムだ。」・・・という、もはや信念と化した、狂気に近い思い込みが私にはある。

「マニュアルを読まなくても使えるプログラム」

それを実現するのがGUIなのだが、簡単・高速に、そのインターフェイスを作る機能は残念ながらPythonにはない。tkinterやPyQtを試したこともあったけど、Delphiのようにはいかなかった。直感的な操作という点で、どうしてもPythonで使えるGUI環境作成ツールはどれもこれもDelphiのそれに見劣りする(・・・と私は思う)。

唯一、2018年から開発が始まったというPySimpleGUIだけは、ちょっと違ったが。

さらに、実行形式のexeファイルにする作業もPythonだと困ることが多い。以前、業務で使用するプログラムをPythonで書き、exe化したら何と300MBを超える巨大なexeができちゃった・・・ことがある。ちゃんと動いたけど。必要なライブラリを全部!詰め込んだから、おなかいっぱいになっちゃった・・・んだろう。たぶん。

ところで逆に、Delphiで業務で使用するマークシートリーダーを開発した際、Delphiから利用できるOpenCVライブラリを使ったのだが、100枚読み取るのに4~5分を要した。読み取るA4横のマークシートは1枚が「1行あたりマーク数16個×25行×3列」という仕様(これは必須)なので、1枚あたり判定必要数はなんと1200! で、これが100枚あるとすると合計12万!

PCは、マークされている場所だけ読み取る・・・なんてヒト並みの芸当は絶対にできないから、白紙のマークシートであっても地道に1個1個・・・1枚についてきちんと1200回、白・黒の判定を繰り返す(実際の処理は、スキャナーで読み取ったマークシート画像にゴミ取り用のガウシアンぼかしをかけてから、ある閾値で二値化して、白黒反転させ、1行ずつ元画像から切り出して、さらにその画像を1行あたりのマーク数で細かく均等に分割して、1枚について1200個生成される画像1つ1つについて画素が白の部分の面積を計算し、白面積が最も大きい画像をマークありぃ!と判定している)。

私なら、1枚でやめます。・・・ってか、1行分でも多分無理です。

読み取りに「5分」かかったとすると、5分は300秒。12万個のマークを300秒で読むから、1秒あたりの読み取りマーク数は400個。1枚に3列(1200個)あるから1列1秒、1枚3秒で読んでおり、ヒトがそれをやるのに比べれば、これでも十分に高速なのだが・・・。

ところがPythonで同じ処理を書いてみたら、速いのだ。コレが・・・。

1枚250ms以下で読み取ってしまう。処理の流れはどちらも同じ(どちらも書いたのは私)だから、Python環境での処理速度は、Delphi環境のそれの12倍も速いことになる・・・。100枚を30秒未満で処理できる実力。これをどうにかして生かしたい。

そんな時、Embeddable Python というモノが存在することを、私は知ってしまったのだ。

Python Embeddableとは、超軽量なPythonの実行環境でファイルサイズがとても小さく、Windowsのシステムを汚さずに環境構築ができ、配布するのも簡単という特徴があります。

Webエンジニアの仕事見聞録(https://engineer-milione.com/programming/python-embeddable.html)より引用

Delphiで創ったコレが・・・

拙作Delphi製マークシートリーダー(テスト用サンプルを読み込んだところ)
拙作マークシートリーダーは上記リンク先ページからダウンロードできます。

PythonのOpenCVという視力を得たなら・・・どういうコトになるか?と思うと・・・

年甲斐もなく、ドキドキしてくるじゃありませんか! 皆さん

まとめ

(1)DelphiはGUI環境を簡単・高速に作成できる。

(2)Pythonには強力無比の数値演算ライブラリがある。

(3)DelphiでGUIを作成し、内部的な演算処理はPythonで実行。

(4)それを可能にするのがEmbeddable Python

(5)誰が言ったか知らんけど、

為せば成る!

俺はやるぞ!

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【関連記事】

Setup Old Python4Delphi

「Delphiで古いPythonForDelphiを使う(おすすめしません)」

OpenCVとNumpyをインストールしたembeddable pythonをDelphiから利用できるようにした。これはその覚書その2。タイトルにあるように古いPython4Delphiをセットアップした時の記録。

1.どなたにもおすすめしません(最新版が便利です)
2.旧バージョンのインストール方法
3.まとめ
4.著作権表示の記載方法
5.お願いとお断り

1.どなたにもおすすめしません(最新版が便利です)

今はどこを探しても、この古いPython4Delphiはダウンロードできないが、もし、それが入手できて、使わなければならなくなった時には参考になる(カモ)。

ちなみに、ずっと愛用していた(10年以上前のバージョン?の)Python4Delphiは最新のDelphi11に、ここに記載した方法でほぼ問題なくインストールでき、かつ、期待通りに(VCLコンポーネントとして)動作した。←が、どなたにもおすすめしません。

最新のPython4DelphiをDelphi10.3以降のバージョンにインストールする方法は・・・

2.旧バージョンのインストール方法

以下の内容を利用される場合は、自己責任でお願いします。以下に記載した内容を利用した結果、利用者および第三者に損害が発生したとしても、このサイトの管理者は一切責任を負えません。予め、ご了承ください。

まず、困ったことに、ここで取り上げているPython4Delphiのバージョンがいくつなのか、どれくらい前にリリースされたものなのか、いつ、どこから入手したものなのか、いずれもわからない。

気が付いた時には、My PCの中にいた・・・。そんな存在である。

python4delphi-master\PythonForDelphiにあるDeployment.txtには、See document “Deploying P4D.PDF” first.・・・とあるので、これを読むとドキュメントの日付は「5/1/2005」となっている。もしかしたら、それくらい前のものかもしれない。

fmxには非対応のようで、vcl関連のファイルのみで構成されている。Readme.txtで紹介されているファイルとフォルダの構成は以下の通り。

FILES:
Readme.txt This file.
Python.txt Infos about Python, and further references.
Changes.txt List of all changes since the first release.
Tutorial.txt A simple tutorial to use the PythonEngine
To do.txt A to do list.
Deploying P4D.pdf Notes on the Deployment of your applications using Python for Delphi.
C++ Builder Notes.txt Notes on using C++Builder with the Python for Delphi components.
PythonAtom.hlp A help file explaining the use of TPythonAtom
Demos A folder containing several demos of Python for Delphi.
Components\Python.* The “Python for Delphi” packages.
Components\Sources\Core The source folder of the core “Python for Delphi”.
Lib Library of Python modules.
PythonIDE A Python developpment environment written in Delphi.
See PythonIDE\Readme.txt for the required components.
Modules Contains the Delphi\Delphi.dpr project that creates the Modules\Delphi.pyd Python module
that allows you to interact with Delphi VCL objects from Python.

同じく Readme.txt にあるインストール方法は、次の通り。この手順でDelphi10.4にインストール。

INSTALLATION:
install the Python for Windows distribution (http://www.python.org/).

1) Install the core components
For recent versions of Delphi, install the “Python_d” package located in the
Components folder and add the folder “…\Components\Sources\Core” to the library path.

1) コアコンポーネントのインストール

Components フォルダにある “Python_d” パッケージをインストールし、ライブラリパスに “…\Components\Sources\Core” フォルダを追加してください。

注意:異なるバージョンのDelphiがインストールされている環境では、Python_D.dpkをダブルクリックすると拡張子dpkに関連付けされたバージョンのDelphiが起動してしまう(あたりまえ)。このような場合は、P4D環境をインストールしたいDelphiを起動し、ファイルメニューの「開く」からPython_D.dpkを指定してパッケージをインストールする。

また、「開く」のは「Python_D.dpk」で、「Python_D.dproj」ではないことにも注意する。で、「Python_D.dpk」を開いたら・・・

プロジェクトマネージャーに表示されたPython_D.bplを右クリックして、表示されたサブメニューの「インストール」をクリック。

【Delphi10.4の場合】

この方法でエラーなくインストールできた。(・・・気がするだけかもしれない)

【Delphi11の場合】

次のエラーが発生!

[dcc32 エラー] PythonEngine.pas(63): E2029 ‘INTERFACE’ が必要な場所に 識別子 ‘Error’ があります。

エラーが起きている場所を確認すると・・・

unit PythonEngine;

{ TODO -oMMM : implement tp_as_buffer slot }
{ TODO -oMMM : implement Attribute descriptor and subclassing stuff }

{$IFNDEF FPC}
{$IFNDEF DELPHI2010_OR_HIGHER}
  Error! Delphi 2010 or higher is required! ←ここでエラーが発生!
{$ENDIF}
{$ENDIF}

とりあえず、この1行をコメント化して再実行。

{$IFNDEF FPC}
{$IFNDEF DELPHI2010_OR_HIGHER}
  //Error! Delphi 2010 or higher is required!
{$ENDIF}
{$ENDIF}

エラーは発生せず。表示されたメッセージを読み、インストールの成功を確認。

もう一度Python_D.bplを右クリックして、表示されたサブメニューの「上書き保存」をクリック。これでパッケージのインストールは完了。

「ライブラリパスに “…\Components\Sources\Core” フォルダを追加・・・」とあるが、パスを追加しなくてもプログラムの動作に必要な.pasファイルをプロジェクトファイルのあるフォルダにコピーすれば動くから、ここでは「追加しない」ことを選択。

重要 特別な理由のない限り、最新版のPython4Delphiを選択することをお勧めします。
(最新版のP4Dパッケージを登録する場合は、ライブラリパスをきちんと設定しましょう)

2) Install the VCL components (this is optional)

For recent versions of Delphi, install the “PythonVCL_d” package located in the Components folder and add the folder “…\Components\Sources\Core” to the library path.

2) this is optional ・・・とあるので、オプションならやらなくてもいいか!ということで実行しない。

3) Build Modules\Delphi\Delphi.dpr (This is optional and unsupported)

Once the project is build you can either extend the Python path with ..\Modules or copy ..Modules\Delphi.pyd to C:\Python24\DLLs, to be able to import the Delphi module from Python.

Note that you can try this module by invoking the ..\Modules\TestApp.py script.

3) This is optional and unsupported ・・・とあり、オプションである上にサポートなしとあるので、これも実行しない。

3.まとめ

(1) Readme.txt の INSTALLATION の手順1)のみ実行すればOKだった。

(2)DelphiのXXX.dprojファイルのあるフォルダへコピーするPython関係のファイルは以下の通り。他のプロジェクトでも利用する場合は、ライブラリパスへ登録した方が使いやすくなるが、このP4Dは最新版ではないので、このようにして利用した(←過去形であることに注意)。

動作に必要なファイル

4. 著作権表示の記載例

参考:Python4DelphiのLicenseについて

GitHubのPython4Delphiのダウンロードページには「The project is licensed under the MIT License.」とある。これは「改変・再配布・商用利用・有料販売すべてが自由かつ無料」であること、及び使用するにあたっての必須条件はPython4Delphiの「著作権を表示すること」と「MITライセンスの全文」or 「 MITライセンス全文へのLink」をソフトウェアに記載する、もしくは、別ファイルとして同梱しなさい・・・ということを意味する。

したがってPython4Delphiを利用したプログラムの配布にあたっては、ソフトウェアの中で、次のような著作権表示を行うか、もしくは P4DフォルダのルートにあるLicenseフォルダをプログラムに同梱して配布すればよいことになる。

Python4Delphiを利用した場合の著作権表示の記載例:

Copyright (c) 2018 Dietmar Budelsky, Morgan Martinet, Kiriakos Vlahos
Released under the MIT license
https://opensource.org/licenses/mit-license.php

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【関連記事】

Setup Python4Delphi

「DelphiからPythonを使えるようにする」

追々記(20231208)

さらにカンタンな方法がありました!

以下、上記の方法にたどり着くまでの、長い長い歩みの記録です。

追記(20231126)

RAD Studio 12.0(Delphi 12.0 Athens)のリリースに合わせ、Python4Delphi も更新されました。
RAD Studio 12.0(Delphi 12.0 Athens)へのインストールに対応した Python4Delphi (20231109版)のインストール記事は、以下のリンク先にあります。

RAD Studio 12.0(Delphi 12.0 Athens)に Python4Delphi をインストールされる場合は、こちらをご参照ください。

以下、2021年12月31日に掲載した記事です(内容は当時のままです)。

OpenCVとNumpyをインストールしたembeddable pythonをDelphiから利用できるようにした。これはその覚書。

1.Python4Delphiのダウンロード
2.P4DパッケージをDelphiにインストール
3.ライブラリパスの設定
4.P4Dの著作権表示の記載例
5.お願いとお断り

1.Python4Delphiのダウンロード

まず最初に、Python for Delphi(P4D)をGitHubから入手してDelphiにインストール。

P4Dの入手先URL https://github.com/pyscripter/python4delphi

Git Bashがない場合は、Codeをクリックすると表示されるサブメニューのいちばん下にDownLoad ZIPがあるので、これをクリックしてZIPファイルをダウンロードし、任意の場所(フォルダ)に解凍する(ここではダウンロードするフォルダの名前を「P4D」として説明)。

Download ZIPをクリック

Git Bashがある場合は・・・

Codeをクリック → 表示されるサブメニューからURLをコピー

で、Git Bashがあれば開く。

Git Bashは公式サイト https://gitforwindows.org/ から入手可能。

Git Bashでは、ls(エルエス)コマンドで今いる場所が表示され、cdコマンドでディレクトリの移動ができる。今、いる場所の直下のフォルダに移動するのであれば、Git Bashの画面に直接「cd フォルダ名」と入力してEnterキーを押す。

今、いる場所の直下に新しくフォルダを作成する場合は「mkdir フォルダ名」と入力してEnterキーを押す。

1階層上に移動したい場合は、「cd ../」と入力してEnterキーを押す。

階層の深いフォルダへ移動したい場合は、「cd」+半角スペースを入力後、そのフォルダをGit Bashの画面上へドラッグ&ドロップすればOK!

ここでは、Git Hubのリポジトリをクローンする「中が空の任意のフォルダ」を選ぶ(上の図ではあらかじめ作成しておいたP4Dフォルダを選んでいる)。

フォルダの内容が空であれば、フォルダの名前は何でもOKだが、後のPython4Delphiのインストール時に、「インストール元フォルダとして選択するフォルダとなる」ことに十分注意(フォルダ名を忘れないように)する(ここではフォルダ名を「P4D」としている)。

Git cloneと入力し、半角スペースを入れ、画面を右クリックして表示されるサブメニューのPasteをクリック。Enterキーを押すとダウンロードが始まる。

Enterキーを押してダウンロード開始。
ダウンロード終了時の画面

※ Git Bashがない場合は、Codeをクリックすると表示されるサブメニューのいちばん下にDownLoad ZIPがあるので、これをクリックしてZIPファイルをダウンロードし、任意の場所(フォルダ)に解凍する。(再掲)

2.P4DパッケージをDelphiにインストール

ここで超重要ポイントがひとつ

ダウンロードが無事完了すると、P4Dフォルダの中には「python4delphi」フォルダが出来ている。

(ZIPファイルを解凍した場合は「python4delphi-master」フォルダが出来る)

このフォルダの名前を手動で「P4D」に変更(リネーム)する。

「P4D」フォルダの中(1階層下)に「P4D」フォルダがあることになるが、これでOK! 理由は以下の通り。

C:\XXX\P4D\P4D\Install\Readme.mdには、以下の記述が・・・

P4D Installation using MultiInstaller

Use for Delphi Seattle (10.4) or later to install all packages in one step.

  1. Clone or copy the Python4Delphi git repository to a folder of your choice. The setup.ini file assumes that the folder is called “P4D”. If you chose to name your folder differently then modify the “Folder” option in setup.ini.
  2. Close all Delphi IDEs running.
  3. Run MultiInstaller.exe
  4. Select the packages you want and press Next
  5. In the dialog box specify the parent folder of “P4D” (i.e. the folder containing the directory to which you have copied Python4Delphi) and the Delphi target version. Then press Next to install the components

Google先生曰く・・・

MultiInstallerを使用したP4Dインストール

Delphi Seattle(10.4)以降で使用して、すべてのパッケージを1つのステップでインストールします。

  1. Python4Delphigitリポジトリのクローンを作成するか選択したフォルダーにコピーします。 setup.iniファイルは、フォルダが「P4D」と呼ばれることを前提としています。フォルダに別の名前を付けることを選択した場合は、setup.iniの[フォルダ]オプションを変更します。
  2. 実行中のすべてのDelphiIDEを閉じます。
  3. MultiInstaller.exeを実行します。
  4. 必要なパッケージを選択して、[次へ]を押します。
  5. ダイアログボックスで、「P4D」の親フォルダ(つまり、Python4Delphiをコピーしたディレクトリを含むフォルダ)とDelphiのターゲットバージョンを指定します。次に、[次へ]を押してコンポーネントをインストールします。

Python4Delphiをコピーしたディレクトリを「P4D」にリネームして、さらに、インストール時に表示されるダイアログボックスでは・・・

「その親フォルダを指定せよ」

と言っている・・・。

C:\XXX\P4D\P4D\Installにある「MultiInstaller.exe」を起動
デフォルトですべてにチェックが入っている。そのままNextをクリック。
親の方のP4Dフォルダを選択し、OKをクリック
Compile packages and install on IDE にチェック(My環境ではDelphi11しかないので、チェックを入れると自動的にRAD Studio 11 Alexandriaのオプションが選択された)。

複数バージョンのDelphiがインストールされている環境であれば、インストールしたいバージョンを選択することになるはず。

Nextをクリックして続行。無事終了すれば下のような画面が表示される。

Delphi11にも無事インストールできた(あらかじめInstallフォルダ内にあったSetup.iniを確認したところ、Pathの設定に10.4+とあるから大丈夫と思ったが)。Finishをクリックしてインストール終了。

DelphiのIDEを起動して確認。

パレットに7匹のヘビを無事発見。

3.ライブラリパスの設定(確認)

追加したP4Dのパッケージを使用する場合、パッケージをインストールした後で、
「ツール」→「オプション」→「言語」→「Delphiオプション」→「ライブラリ」の順にクリックして下の画面を表示する(Delphi11の場合)。

「ツール」→「オプション」で上の画面が表示されるので、左ペインでさらに「言語」→「Delphi」→「ライブラリ」と進み、次に右ペインのライブラリパス(B)の赤枠囲みの…をクリックする。

表示される画面で、ライブラリのSourceファイルがあるフォルダのパスを登録する。ライブラリのパスの設定はターゲットにするそれらのプラットフォームごとに設定する必要がある。上の画面では 「Windows 32ビット」 のプラットフォームに対して設定している。 必要であれば、「Windows 64ビット」 のプラットフォームに対しても設定する。

ライブラリのSourceファイルは、PCを変更した場合でも容易に参照できるよう、
絶対に忘れない場所に置くようにしている。
また、上の例では最新版のP4DのSourceが階層構造を持っているため、共通利用するものとそうでないもの(vcl/fmx)を、それぞれ分けて登録している。

コンパイルを実行すると、Delphiはいちばん最初にプロジェクトファイル(.dproj)のあるフォルダ(ここはパスが通っているから登録は不要)を検索し、必要なユニットファイル等の有無を確認。もし、そこに必要なファイルがなければ、この画面に登録したライブラリパスを検索するようだ。

まとめ

(1)Python4Delphiをダウンロードするフォルダの名称は任意だが、そこに作られるフォルダ「 python4delphi 」は「P4D」にリネームする。

(2)MultiInstaller.exeを実行してインストール先フォルダを指定する際には、上でリネームした「P4D」フォルダの1階層上のフォルダを指定する。

(3)パッケージのインストール後、コンパイル時に必要なSourceファイルのある場所をライブラリパスに登録する。

4.P4Dの 著作権表示の記載例

参考:Python4DelphiのLicenseについて

GitHubのPython4Delphiのダウンロードページには「The project is licensed under the MIT License.」とある。これは「改変・再配布・商用利用・有料販売すべてが自由かつ無料」であること、及び使用するにあたっての必須条件はPython4Delphiの「著作権を表示すること」と「MITライセンスの全文」or 「 MITライセンス全文へのLink」をソフトウェアに記載する、もしくは、別ファイルとして同梱しなさい・・・ということを意味する。

したがってPython4Delphiを利用したプログラムの配布にあたっては、ソフトウェアの中で、次のような著作権表示を行うか、もしくは P4DフォルダのルートにあるLicenseファイルをプログラムに同梱して配布すればよいことになる。

Python4Delphiを利用した場合の著作権表示の記載例:

Copyright (c) 2018 Dietmar Budelsky, Morgan Martinet, Kiriakos Vlahos
Released under the MIT license
https://opensource.org/licenses/mit-license.php

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